ディズマランドとは、不愉快、陰鬱という意味の“dismal” と、夢の国”Disneyland”を掛け合わせた造語です。
バンクシー監修の「子どもにはふさわしくないファミリーテーマパーク」は、ビミューズメント・パーク(Bemusement Park)と副題が付けられ、2015年8月22日から9月27日までの期間限定でイギリスのサマセット州のウェストン=スーパー=メアにて開催されました。
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この記事では、バンクシーのディズマランドについて、コンセプトから展示品、ディズニー関連の作品まで詳しく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
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ディズマランドの意味は”悪夢の国”
ディズマランドとは、ディズニーランドを意識した”夢の国”ではなく、現実世界を突きつける”悪夢の国”でした。
2015年8月22日から5週間の期間限定で、イギリス南西部のウェストン=スーパー=メアという寂れたかつてのリゾート地にオープンしました。
夢の国・ディズニーランドのダークパロディで、世界で一番憂鬱になれるテーマパーク『ディズマランド』では、歪んだリトルマーメイドの彫刻や荒廃したシンデレラ城、カボチャの馬車で横転事故を起こしパパラッチに撮影されるシンデレラなどのバンクシー作品が展示されました。
さらに、バンクシーが制作を依頼した58名のアーティストの作品も数多く展示されていました。
張りぼての入国管理ゲート
ディズマランドの入場ゲートは、ダンボール製でした。
ビル・バーミンスキの作品は、一見子供だましのようですが、造形に縁取りがされていて、二次元のラインアートに踏み込んだような錯覚に陥る仕掛けになっています。
入場ゲートを通過しようとすると、警備員が睨んできたり、絡んでくるなど「感じの悪い接客」の洗礼を受けます。
意味もなくその場でくるくる回転させられたり、いきなり睨みつけられ「このカバンはお前のか?本当か?」とイヤミが多いのは、ブリティッシュ感覚です。
やる気のないキャスト
ディズマランドのキャストたちは、ボサボサの髪の毛と、虚な目で来場者を迎えます。
ミッキー耳のカチューシャをつけ、蛍光ジャケットを着ていて無愛想な表情がまったく不釣り合いです。おもてなしも頬づえのまま『ようこそ』と言い、キップを手渡すときに手を離さないことも。売る気がなさそうなバルーンには“I am a imbecile” (ウスノロ)の文字が書いてありました。
夢の国とは正反対の仕打ちのオンパレードなのに、ディズマランドでは不思議と愉快に感じてくる演出でした。
荒廃したシンデレラ城と歪んだアリエル
ディズマランドの中央には、荒れた広場と濁った池に荒廃したシンデレラ城がありました。
「憂鬱になれるテーマパーク」というコンセプト通りの建物は、バブル期に造られ経営が行き詰まった地方のテーマパークを思い出させます。
シンデレラ城の前には、ディズニー映画『リトル・マーメイド』の主人公アリエルの像があります。ただ、アリエルの造形は蜃気楼のように歪んでおり、映像が乱れるテレビを見ているようです。
インターネットに頼りすぎた社会への警告にも見えます。
事故したカボチャの馬車とシンデレラを撮影するパパラッチ
荒廃したシンデレラ城の入口には、このような看板がありました。
“Step inside the fairytale and see how it feels to be a real princess.”(おとぎ話の中に入って、本当のお姫様になった気分を味わってみて)。
ただ、バンクシーの考える本当のお姫様とは、おとぎ話の中の皆が羨むお姫様ではありませんでした。
横転したカボチャの馬車や目が開いたままのシンデレラ姫、身体が捻られた転倒した馬、そして、その光景にストロボの光を浴びせかけるパパラッチが再現されています。
この作品は、36歳でこの世を去ったプリンセス・オブ・ウェールズ=ダイアナ妃の事故からインスパイアされた作品です。
そして、「憂鬱になれるテーマパーク」では、こんな悲劇を背景に記念写真も買えるようになっていました。
バンパーカーに乗る死神
バンクシー作品によく登場する重要なモチーフの1つ、死神。
2013年ニューヨークで開催した“Better Out Than In”でも披露した「Grim Reaper Bumper Car”(死神ゴーカート)」は、70年代風ディスコフロアでダッジム・コースターに乗った死神が、ビートに乗ってくるくる回転してみせています。
流れている曲はビージーズの“Stayin’ Alive”。『周りに流されないで、とにかく生きようとするんだ…』という歌詞の曲です。
ダンスする死神に人生を説かれる。シニカルとユーモラス、悲劇と喜劇の境界を混乱させる演出です。
難民を乗せたボート
アフリカからヨーロッパへ渡ろうとする難民を乗せたボート。
ギュウギュウに難民を乗せたボートは、1ポンドを入れると遠隔操作できるアトラクションになっている。
ただ、ハンドルを右に回すと左に進み、左に回すと右に進むとボートが逆方向に動くという細工がされています。
その傍ら、水面には水死体となった少年の人形が浮かんでいます。
自分ではどうにもできない難民の現状と、現実世界の多くの問題が表現されています。
バンクシーがディズマランドで伝えるメッセージとは
ディズマランドは「アート・娯楽・軽いアナ-キズムの祭典。カウンターカルチャーを店頭で簡単に手に入れることができる場所」でした。
壊れた噴水にぼうぼうの雑草。スローなハワイアンが薄気味悪く漂う会場に、『北サマセットで過去最大の現代アートコレクション』という”The Gallerries”をはじめ、ひとくあるアトラクションが散在するアナーキーさ。
バス停の広告掲示板の壊し方の授業を行う無政府主義者のトレーニング・キャンプまで用意され、ライブイベントも行われます。
ディズマランドは現代社会への辛辣なアイロニーで満たされたエキシビションだったのです。
夢の世界に現実をぶつけることで社会問題を浮き彫りにし、アメリカの大量消費社会に疑問を投げかけている。用意周到に準備されたテーマパークは、バンクシーのプロジェクトのひとつの到達点といえる。
ディズマランドの入場料は?
ディズマランドの入場料は3ポンド(約500円)でした。
バンクシーはストリートを主戦場にするのには、芸術を見るのにお金はいらないと言う一貫したメッセージがある。
観覧車でもなければ、100円も取るなと言うのが、バンクシーの考えなのです。
来場者は延べ15万人に達しました。1日4,000枚の販売があり、地元に30億円以上の経済効果をもたらしたそうです。
人気リゾート施設の面影はとうに失われていましたが、「久しぶりに活気が戻った」と街の人は言います。
タクシーは満車が続き、ホテルの予約がとりにくくなったほど、ディズマランドは人々を引きつけました。
バンクシーのディズマランドで販売された物
Photos taken from the book
Are We There Yet? Pictures of Dismaland by Barry Cawston
link本から抜粋した写真
「まだそこにいるのか?」バリー・カウストンによるディズマランドの写真
バンクシーのディズマランドの現在
ディズマランドは、予定通り9月27日に閉園後、すべて解体されました。
元々、イギリス南西部のウェストン=スーパー=メアという場所は、かつてトロピカーナと呼ばれた海辺の野外リゾートプールでした。
しかし、リゾート地のプールは閉鎖後14年間も放置され、物置場にされていたのです。
そんな場所に何かを建築しているのを見た地元の人たちは、ホラー映画の撮影に使うと聞かされていたそうです。しかし、完成したシンデレラ城を見て、バンクシーのプロジェクトだと知ることになります。
トロピカーナは、バンクシーにとって子供のころ夏になると家族で訪れた思い出の場所でした。忘れ去られた街に、バンクシーはもう一度光をあてたのです。
After Dismaland closed in September 2015 nothing was wasted. All the building materials were recycled into shelters for homeless migrants and the specially trained surly and unhelpful staff were relocated to Virgin customer services.
ディズマランドが 2015 年 9 月に閉園した後、無駄なものは何もありませんでした。すべての建築資材はホームレス移民のための避難所としてリサイクルされ、特別な訓練を受けた無愛想で無愛想なスタッフはヴァージンの顧客サービスに配置転換されました。
ディズマランドで利用した建築資材は、フランス北部の港町・カレーの難民キャンプ「ジャングル」に送られて、避難所の建設に再利用されました。
その年、バンクシーは自分の資材を使って一部が建てられた難民キャンプ「ジャングル」の壁に新作を描きました。
バンクシー作品のジョブズ「シリア移民の息子」The Son of a Migrant from Syria
ディズマランドの著作権は?
イギリスでは、2014年10月1日の著作権改革でパロディー制作の権利が緩和されました。
パロディ元の作品と市場競合しない場合、パロディ制作の権利が認められるようです。
バンクシーとディズニーの関係
バンクシーは、2006年にディズニーランド内で大騒ぎを起こしました。
ビッグサンダーマウンテンの柵に無許可で、囚人服を着た人形をくくり付け、アメリカのテロ対策を批判したのです。
バンクシーのダンボの意味とは
バンクシー作品『ダンボ』はシリアの反乱勢力やノロマを意味しています。
バンクシーのミッキー作品Naplm(2004年)
バンクシーは、『ナパーム弾』でミッキーマウスを登場させ、ディズニーを批判しています。
バンクシーの分身といえるネズミは、ミッキーマウスと同じ動物です。しかし両者の間には、夢と現実、光と影、資本主義の消費社会と、現実社会の問題と冷酷な対比が存在しています。
ディズマランドの壁には、“LIFE isn’t always A FAIRYTALE”(人生はおとぎ話とは限らない)と言うバンクシーの捨てゼリフがありました。
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ディズマランドについてよくある質問
ディズマランドとはどういう意味ですか?
ディズマランドとは、世界で一番憂鬱になれる「悪夢の国」という意味のテーマパークです。
「夢の国」ディズニーランドのダークパロディで、歪んだリトルマーメイドの彫刻や荒廃したシンデレラ城、カボチャの馬車で横転事故を起こしパパラッチに撮影されるシンデレラなどのバンクシー作品が展示されました。
Dismalandとは、不愉快、陰鬱という意味の“dismal” と、夢の国”Disneyland”を掛け合わせた造語からできています。
バンクシー監修の「子どもにはふさわしくないファミリーテーマパーク」は、ビミューズメント・パーク(Bemusement Park)と副題が付けられ、2015年8月22日から9月27日までの期間限定でイギリスのサマセット州のウェストン=スーパー=メアにて開催されました。
ディズマランドの入場料はいくらですか?
ディズマランドの入場料は、3ポンド(約500円)でした。
バンクシーはストリートを主戦場にするのには、芸術を見るのにお金はいらないと言う一貫したメッセージがあります。観覧車でもなければ、100円も取るなと言うのが、バンクシーの考えなのです。
ディズマランドの来場者は延べ15万人に達し、地元に30億円以上の経済効果をもたらしたそうです。
ディズマランドはどこですか?
ディズマランドは、イギリス南西部のサマセット州ウェストン=スーパー=メアというかつて「トロピカーナ」と呼ばれた廃れた海辺の野外リゾート地のプールに、2015年8月22日から9月27日まで5週間の期間限定で、オープンしました。
ディズマランドは閉園後、すべて解体されました。
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— BANKSY🎈バンクシー非公式マガジン (@bandal_jp) October 7, 2023
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