バンクシーはウクライナに、新作の壁画・絵を残したことを公式インスタグラムと公式サイトで発表しました。
英国時間2022年11月11日は、破壊された建物に描いた『逆立ちしている体操選手』の作品が投稿されました。そして6日後、バンクシーは首都キーウ近郊の街ボロジャンカなど、複数の都市にまたがる壁画7点を制作していたこと動画で発表しました。
バンクシーの新作7点はどれも「ウクライナの人々との連帯」を意味する作品になっています。
こんにちは。バンクシー非公式マガジンBANDAL編集部です。
バンクシー非公式マガジンBANDALでは、バンクシーがなぜ注目されるのか。どうやって有名になったのかなど。バンクシー作品の意味を解説したり、その魅力、メッセージ性の解釈、現存する場所などを発信しています。
令和4年3月31日、外務省は「ウクライナの首都等の呼称の変更」の中で、ウクライナの首都の呼称をロシア語に基づく「キエフ」からウクライナ語に基づく「キーウ」に変更し、ウクライナとの一層の連帯を示すことを発表しました。 |
本記事では、バンクシーがウクライナの首都キーウなどに残した、2022年新作の壁画・絵の意味について解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
バンクシー展 GMOデジタル美術館 東京・渋谷に行ってみた!
バンクシー名言128選!英語&日本語の意味・メッセージも合わせて解説
バンクシー新作7点の壁画@ウクライナ
バンクシーが公式インスタグラムで7点の作品を発表するまで、ウクライナではさまざまな憶測が飛び交っていました。
バンクシーがウクライナに残した新作の壁画・絵の7点は、2つの投稿に分けて発表されます。
まずは、2022年11月11日の『逆立ちしている体操選手』の作品。次に2022年11月17日、ウクライナの民族音楽をBGMに、残りの6点の作品を制作する様子を収めたリール動画です。
リール動画では、ステンシルの型を準備する様子や、制作場所近くの住民のインタビューなども収録されており、このようなメッセージが掲げられました。
In solidarity with the people of Ukraine
そして、バンクシーのインスタグラムには「ウクライナの人々との連帯」のコメントが多く寄せられました。
バンクシー壁画『逆立ちする体操選手』
バンクシーがウクライナで制作した壁画作品『逆立ちする体操選手/The Gymnast』は、ロシアの軍事侵攻によって破壊された建物の瓦礫の山の上でバランスをとる女性体操選手を描いています。
Borodyanka, Ukraine(ボロディアンカ、ウクライナ)
公式インスタグラムにいち早く投稿されたこの作品は、首都キーウから北西におよそ30マイル(48km)にある街、ボロジャンカに描かれました。
ボロジャンカは2022年3月、ロシアによる軍事侵攻が始まった直後から激しい攻撃を受け、数週間にわたって占領された町の1つです。
破壊された街で、新体操に取り組むレオタードを着た少女は、ウクライナの「不屈の象徴」を意味しています。
バンクシー壁画『柔道大会でプーチンを投げる子ども』
バンクシーがウクライナに残した壁画作品『柔道大会でプーチンを投げる子ども/The Judo Competition』は、柔道着を着た子どもが黒帯の男性を背負い投げする様子を描いています。
この作品は、『逆立ちする体操選手/The Gymnast』と同じからボロジャンカの、車で5分ほどの場所に描かれました。
国際柔道連盟から全役職を解任された、ウラジーミル・プーチン大統領を風刺した作品と言われています。柔道の愛好家のプーチンは、黒帯の有段者でもあります。
この柔道着の少年は小さなウクライナで、大男のロシアを負かしています。「ウクライナの抵抗の象徴」を意味します。
バンクシー作品『プーチンの柔道切手』
2022年2月24日、ロシア侵攻から1周年のタイミングで、ウクライナ郵便局はバンクシーの壁画を印刷した切手を発行しました。切手の左下には、プーチン氏を罵倒する言葉を略したキリル文字が付け加えられています。
首都キーウの中央郵便局には、バンクシー切手を買おうと大勢の住民が列を作りました。切手は、ウクライナ郵便公社のウェブサイトからも購入できます。同じ壁画を使ったハガキや封筒も販売されています。
バンクシーはこれまで、作品の商用利用について認めない旨を発信してきました。ウクライナの切手についてコメントしていませんでしたが、2月28日にインスタグラムで切手の画像を投稿したことで、公認する旨を示したと見られています。
バンクシーの切手は、ウクライナの人々への連帯の象徴です。また、今なお続く戦争の犠牲者を追悼するための「戦争記念碑」となりました。
バンクシー壁画『シーソーで遊ぶ子ども達』
バンクシーが首都キーウ市内の独立広場にあるコンクリートブロックに残した壁画作品『シーソーで遊ぶ子ども達/Kids Playing』は、金属製のタンクトラップをシーソーにして遊ぶ2人の子どもが描かれています。
タンクトラップとは、対戦車障害物を意味します。
バンクシーは、作品に少年・少女を描くことが多くあります。子どものモチーフは、誰もが経験する普遍的な体験を描いており、作品を見た人の共感を呼び起こす強い力を持っています。
バンクシー壁画『入浴中のおじさん』
バンクシーが首都キーウ近郊のゴレンカに残した壁画作品『入浴中のおじさん/Old man taking a bath』は、破壊された住居の浴槽で体を洗う男性を描いています。
この作品は、いかに多くの人々が日常生活を奪われたかを意味しています。
また、ウクライナに降りかかった、ロシアの汚れを綺麗に洗い流すというメッセージもあります。
バンクシー壁画『消化器を持つガスマスクの女性』
バンクシーが首都キーウ近郊の都市ホストメルに残した壁画作品『消化器を持つガスマスクの女性/Woman with a gas mask』は、破壊された黄色い壁の建物に、ガウンを着た女性が、消火器を持って立つ姿を描いています。
ホストメルもロシア軍の激しい空襲に遭い、深刻な被害を被った都市です。
空襲によって寝起きなのか、女性の頭にはカーラーが巻かれています。ただ、急に起きたにも関わらず、顔にはガスマスクを着けていることから、この作品もまた戦争が一般市民の日常生活を奪っていることを意味しています。
バンクシーの壁画作品『消化器を持つガスマスクの女性/Woman with a gas mask』は、活動家グループに剥ぎ取られてしまいます。活動家はバンクシー作品の撤去作業を撮影し、その映像をネットに公開しました。
ストリートアートは、ルーブル美術館の美術品とは対照的に、誰のものでもない。
逮捕された活動家は、バンクシー作品を剥ぎ取るという行為は、一種のパフォーマンスでもあると主張しました。バンクシー作品を撤去し、競売にかけ、収益をウクライナ軍に寄付するつもりだったとも話しています。
バンクシー壁画『ミサイル発射車両』
バンクシーが首都キーウ市内に残した『ミサイル発射車両/The Missile』は、元々あった男性器の落書きに、軍用トラックを描き加えた作品です。
男性器をミサイルに見立てたロシアの軍用トラックには、「Z」マークがついています。
アルファベットの「Z」は、ロシア軍の戦車や軍用車両に描かれるマークです。正式な意味は明らかにされていませんが、ロシア語で「勝利」を意味する「Za pobedy」の頭文字ではないかと推測されており、ウクライナ侵攻支持者および極右を表すシンボルになっています。
男性器を運ぶ軍用トラックは、ロシア軍侵攻に反対する意志をアイロニカルに示しています。
Do you mean this one? For this, I would kick out all his teeth and break his legs.
この作品について?足を折ってぶっ飛ばしてやりたい。
ウクライナの2人の男性が脅すようなことを言って、バンクシーが公開した90秒の動画を締めくくっている。
バンクシー壁画『首コルセットを巻く体操選手』
バンクシーがウクライナで制作した壁画作品『首にコルセットを巻く体操選手/Gymnast with a corset』は、穴の空いた壁の上で新体操のリボンを披露する女性選手を描いています。
イルピンもロシア軍の侵攻直後、大きな被害を受けた都市です。また、キーウ郊外にあるこの町は、ロシア軍によって数百人の一般市民が殺害された悪名高き虐殺現場です。
華麗な体操選手は、ウクライナの元新体操選手アンナ・ベッソノバがモチーフになっています。首を痛めたようなコルセットを巻きながらも踊り続ける表現は、自由を奪うロシアに対する強い抵抗を示しています。
バンクシーの目撃情報も「バンクシーは5人いた」
バンクシーが残した作品について、ウクライナの人々の反応はさまざまでした。
この作品は歓迎するべきだと思います。誰かが作品を見て、なにか変わるきっかけになるかもしれない。
戦争によって私の家は壊されました。私たちに必要なのは作品ではなく、平和と平穏な日常だけです。
そして、中には作品を描いていた人と直接話したと言う人もいました。
10月30日に4〜5人のグループで来ていました。作品を描いていたのは1人で、スプレー缶を使っていました。
中には、「2人組だった」という目撃情報もあり、単独行動でなかった可能性が高いです。
また、バンクシーと思われる人物からインタビューを受けた人や、支援物資を受け取った人もいました。
バンクシーのウクライナ支援の結果は?
この投稿をInstagramで見る
バンクシーは公式インスタグラムで、ウクライナ支援のため作品50点を販売すると発表しました。
I’ve made 50 of these screenprints with all proceeds going to our friends in Ukraine.
visit banksy.legacyofwarfoundation.com
公開した動画の中で「ウクライナの人たちとの連帯」を示しているバンクシーは、1点5,000ポンド(約84万円)で作品を販売しました。
売上は、英国の国際慈善団体「Legacy of War(レガシーオブウォー)」を通じて、ウクライナで支援を行う団体の活動資金に充てると明らかにしました。
バンクシー反戦・平和主義を意味する作品
アートは、あらゆる場面で反戦争を表現するための強力な手段です。
ロシア・ウクライナ戦争も例外ではなく、現代アーティストたちは芸術作品を通じてロシアの侵略を批判し、ウクライナの人々と文化の復興を支持しています。芸術作品の中には悲しみを表現しているものもあれば、悲劇から復活する希望と抵抗の火を表現しているものもあります。
バンクシーのウクライナ介入は「不屈のシンボル」として称賛され、多くの人に温かく歓迎されました。
バンクシー作品は、芸術がウクライナを表現の場、連帯の場、そして不屈のシンボルとして機能させることを実証しました。
バンクシー非公式マガジンBANDALのTwitter
ガザ地区のハマスがイスラエルに対して空と地上攻撃で宣戦布告したことを受け、イスラエルの首相は「我々は戦争状態にある」と宣言
バンクシーはイスラエルが「テロ攻撃から自国民を守る」という名目で建設を続ける分離壁や、イスラエル軍の攻撃で疲弊したガザ地区に反戦を訴える作品を残してきた https://t.co/1jtF867IPj pic.twitter.com/3nAlT0vs1V
— BANKSY🎈バンクシー非公式マガジン (@bandal_jp) October 7, 2023
バンクシー非公式マガジンBANDALでは、Twitterにて作品解説をしています。
ぜひ、フォローしてみてください!