ディズマランドの象徴的なモニュメント『アリエル』の彫刻。
2015年8月22日〜9月27日までイギリスのサマセット州のウェストン=スーパー=メアにて開催された、バンクシー監修の子どもにはふさわしくないファミリーテーマパーク『ディズマランド』。
困惑させる遊園地を意味するビミューズメント・パーク(Bemusement Park)の副題が付けられ、ディズニーランドが体現する”夢の国”とは程遠い”悪夢の国”となりました。
腐敗したシンデレラ城の前に、象徴的に置かれた『アリエル』の彫刻は、不自然に歪んでいます。
バンクシーは『アリエル』の彫刻にどのような意味を込めたのでしょうか?
こんにちは。バンクシー非公式マガジンBANDAL編集部です。
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この記事では、バンクシーのディズマランドについて、コンセプトから展示品、ディズニー関連の作品まで詳しく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
ディズマランド『アリエル』の意味とは?
ディズマランドの『アリエル』の意味とは、インターネットに頼りすぎた社会への警告と言われています。
アリエルの造形は、蜃気楼のように歪んでおり、映像が乱れるテレビを見ているようです。
このような意味だと考える方が多いようです。
作品の解釈は、人それぞれです。他の人の解釈を受け入れることで、作品をさまざまな視点で見ることができるようになります。
BANDALが考える『アリエル』の意味とメッセージ
ディズマランドの『アリエル』は、ルッキズム(外見至上主義)への批判を意味しているのではないかと解釈しています。
ディズニー映画『リトル・マーメイド』の主人公アリエルは、ディズニープリンセスの一員であり、清純で痩せている美しい乙女です。
社会は、その完璧な外見という美しさの一方向しか見ていません。アリエルの彫刻は、歪んでいて、不具合があり、視覚的に混乱させます。
ディズニープリンセスの完璧な美しさという先入観を破壊しています。
生まれながらに苦しみ、制限されてきたという側面を表現しています。
完璧なもの=美しいという社会的な美の基準は、ばかばかしいものです。
美しいと認識されているものすべてが完璧であるわけではなく、美しいの定義が歪んでいるというメッセージを『アリエル』に込めたのではないでしょうか。
『アリエル』の美しく歪んだ彫刻
歪んだアリエルが”美しい”のは、さまざまな理由があります。
ここでの美しいとは、視覚的にどれほど興味深いかということです。
原作『人魚姫』でのアリエルの結末
アリエルの体は、ビデオデッキのテープを巻き戻して止まったかのようにも見えます。
このまま巻き戻し続けると、アリエルが消えてしまいそうです。
ディズニー映画『リトル・マーメイド』の原作『人魚姫』では、アリエルは王子の幸せのために海の泡となる結末を迎えます。
ディズマランドでの『アリエル』
もう1つの歪んだアリエルが”美しい”理由は、彼女の歪んだ体と周囲の環境との並置です。
アリエルの彫刻は、汚れた池の中に真ん中で、腐敗したシンデレラ城の前に置かれます。
ディズマランドに終末的な美学を加える一方で、アリエルの彫刻を見ているとサイケデリックな感覚も与えられます。
歪んだアリエルの彫刻と周囲の環境のコントラストは、視覚的に刺激的です。不気味に美しく、シュールレアリズムな世界を演出しています。
アリエルの彫刻は、古代ギリシャやルネサンス時代の彫刻と同じ種類の美しさではないかもしれません。
しかし、バンクシーがディズマランドの環境に合わせて、歪んだアリエルの彫刻を非伝統的な方法で作ったことにより、この彫刻を美しいものにしています。
このアリエルの彫刻を非常に美しいものにしているのは、作品を見るときに必要な視覚的な魅力です。