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バンクシー『GUESS × BRANDALISED』万引き犯を扇動?匿名性の著作権と商標権

GUESS(ゲス)が、2022年11月上旬にロンドンの店舗にて、バンクシー作品を使用したコレクション『GUESS × Brandalised With Grafftti By Banksy』を展示した。

しかし、イギリス出身の匿名性を保つ正体不明のストリートアーティストは、GUESSが作品の使用許可を取っていないとインスタグラムで主張した。

インスタグラムの投稿では、作品を無断使用したことを「盗み」と捉え、万引き犯を扇動する意図のメッセージを残した。

この投稿を受け、GUESSはロンドンの店舗を一時閉鎖する事態に発展したのだ。

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GUESSを店舗閉鎖に追い込むバンクシー

https://www.instagram.com/banksy/

2022年11月18日、ロンドン中心部「Regent Street(リージェント・ストリート)」にある、アメリカ発の人気アパレルブランド「GUESS」の旗艦店が閉鎖に追い込まれた。

バンクシーは、ウクライナでの壁画に続いて、20223回目のインスタグラム投稿でこのように投稿した。

万引き犯の皆さん、リージェントストリートのGUESSに行ってください。GUESSは許可なく私の作品を盗んだのに、GUESSに同じことするのは間違いでしょうか?

バンクシーは、GUESSが作品を許可なく使用した商品を販売したことを受け、1160万人のフォロワーに「GUESSは、万引きを奨励している」という意図の批判を投稿したのだ。

バンクシーの投稿後、『GUESS』は店舗を一時閉鎖するとともに、外に警備を置き、コレクションを展示したショーウィンドウを覆った。

そして、GUESSの店舗は、ショーウィンドウの展示を変更し「着替える間、ウィンドウをご容赦ください」というメッセージを掲示した。

GUESSが展示したバンクシー作品

https://www.instagram.com/banksy/

バンクシーがインスタグラムに投稿したのは、『Brandalised』というブランド名と複数のバンクシー作品が用いられたカプセルコレクションを展示した写真だった。

カプセルコレクションとは、ファッションブランドが販売期間や数量を限定して販売する小規模な新作発表を意味する。

ファッションブランドが普段展開しているコレクションとは別に、他社のデザイナーやアーティスト、セレブリティなどと共同制作(コラボレーション)して展開されるコレクションだ。

GUESSのショーウィンドウには、バンクシーの代表作『Love Is In The Air(花束を投げる暴徒)』を拡大プリントしたディスプレイが展示されていた。

その前には『Girl With Balloon』『Follow Your Dreams』『Queen Ziggy』『Thug for Life Bunny』など複数のバンクシー作品を使用したTシャツやカバンがディスプレイされた。

 

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商品には、Tシャツやコート、子供服、カバン、アクセサリーなど34個の商品があり、40275ユーロの価格で販売された。

GUESSのプレスリリース

GUESSは、カプセルコレクションに関して公式発表で「インスピレーションを得た」という言葉が使った。

バンクシーの象徴的なモチーフを使用し、バンクシーのグラフィティとGUESSの姿勢を組み合わせたものです。

GUESS(ゲス)の共同創業者兼チーフ・クリエイティブ・オフィサー(COO)のポール・マルシアーノは、このように述べた。

バンクシーのグラフィティは、大衆文化全体に響く驚異的な影響力を持っています。Brandalisedとのカプセルコレクションは、ファッション界が感謝の気持ちを示す方法です。

そして、Guessの公式サイトには、商品は都市グラフィティライセンスである「Brandalised」と提携して生産されたと掲載されていた。

Brandalisedのグラフィティライセンス

https://brandalised.com/

Brandalisedとは、「バンクシーのファンに手頃な価格のグラフィティコレクションを提供すること」を使命とするアーバン・グラフィティライセンスだ。

Brandalisedは、アーバン・グラフィティライセンシーを「世界的なファン文化を支援するために、世界で最も有名なグラフィティの権利」を体系的に確保したとされている。

Brandalisedのウェブサイトによると、同社はこれまでにKappa、Bape、Evisuなどのファッションブランドとコラボしてきた。

しかし、ストリートアートをより身近にするという主張にも関わらず、Brandalisedの「ライセンス」は、バンクシーに許可を得る相談がされることはほとんどない。

ただ、このアーバン・グラフィティライセンスについて、ロンドンの弁護士事務所「Virtuoso Legal」の創設者で、著作権弁護士のリズ・ウォード氏は、このように述べた。

GUESSはバンクシーの作品を、商品に使用する権利があるとする第三者、つまりBrandalisedを通じて合法的に調達したようだ

Guessは、Brandalisedと提携して商品を生産しており、バンクシー作品の無断使用に何の落ち度もなかったようだ。

Brandalisedの反論

 

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Brandalisedは、バンクシーの投稿に反応して2012年にバンクシーが発言した内容を引用し、インスタグラムで次のように述べた。

公共スペースにある広告(グラフィティ)で、見るか見ないか選択の余地を与えないものは、すべてあなたの所有物である。取得し、アレンジし、再利用することができるのはあなた自身だ。

許可を求めることは、誰かがあなたの頭めがけて投げた石をとっておいてくれと頼むようなものだ。

そして、2003年7月17日のガーディアン誌による過去のインタビューを引用してこのように投稿した。

 

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https://bandal.jp/wp-content/uploads/2023/09/Simon-Hattenstone-300x300.webp
Simon Hattenstone

現在、闇市場では偽造バンクシーやステンシルキットが販売され、独自のバンクシーを制作できるようになっています。人々が騙されることを気にしませんか?

https://bandal.jp/wp-content/uploads/2023/07/STILL-OF-BANKSY-PHILLIPS-2021-300x168-1.webp
BANKSY

いいえ。実際のところ、私は3年間密造業者だったので、本当に立つ足がありません(論拠に乏しい)。

バンクシーが活動を始める前に密造していた過去を引用して、Brandalisedはビジネスを正当化する意図の主張をしたのです。

著作権弁護士のリズ・ウォード氏は、BBCの取材でこのように付け加えている。

バンクシーが作品使用を承認した、あるいは作品使用を知っていたのか不明です。

もしバンクシーが知っていたとしたら、バンクシーのインスタグラム投稿は、ある種のゲリラ的なマーケティングキャンペーンを生み出すための商法だったのでしょう。

もしバンクシーが知らなかったとしたら、大手企業や有名ブランドの行為はバンクシーの反体制的な姿勢に反しているので、イライラしているに違いありません。

確かに、バンクシーがこの一件を事前に知っていたのであれば、炎上商法のようにあえて批判や非難を浴びるような手法を使い、注目度や話題性を高めた可能性がある。

しかし、店舗を一時閉鎖したところや売り上げを増やすことができたのかという部分を見ると、事前に知っていた可能性は低い。

GUESS × Brandalised With Grafftti By Banksy』という、あたかもバンクシーが許可したようなコレクションタイトルにバンクシーは、怒りが込み上げたのであろう。

バンクシー作品の真贋認証機関ペストコントロール

ペストコントロール|バンクシー

https://pestcontroloffice.com/

バンクシー作品唯一の真贋認証機関「ペスト・コントロール」は、バンクシーの作品は「非営利で個人的な娯楽」には使用できるが、第三者にライセンスされていないと述べている。

バンクシーの画像を商業目的で使用しないでください。

これには、さまざまな商品を発売したり、アーティストが作成または承認したものではないのに人々を騙していると思わせたりすることも含まれます。

さらに、ペストコントロールの公式サイトには、このように掲載されている。

バンクシーの作品は、特定の場所で機能するものとして定義できます。グッズは、作品の1つをキャンバスやトイレットペーパーホルダーに貼り付けるものです。

バンクシーはグッズを作りません。とても不思議なことに『バンクシーのグッズ』に見えるものは、ほぼ確実にそうではありません。

バンクシー作品のグッズ化や偽物バンクシーの販売については、著作権や商標権の問題が深く関わっている。

「著作権は敗者のもの」

バンクシー「著作権は敗者のもの」

https://www.pinterest.jp/pin/219057969354041170/

バンクシーが、2005年の著書『Wall and Piece』で「著作権は敗者のものである」と主張したのは有名な話だ。

このスローガンは、おそらくバンクシーの最大の後悔の1つであろう。著作権・商標権の問題が取り上げられるたびに、第三者がこのスローガンを唱え「バンクシーは著作権を放棄している」と主張されることがほとんどだからだ。

ペストコントロールは、公式サイトでこのように主張している。

『バンクシーが著書の著作権は敗者のものである』と言ったからといって、アーティストを偽り、詐欺を犯す自由が与えられるわけではない。われわれは監視している。

ペストコントロールが主張するように、バンクシーは偽物バンクシーを許した訳ではない。

バンクシーの著作権と商標権、匿名性の問題

https://www.fullcolourblack.com/

バンクシーにとって著作権・商標権争いは、GUESSの事例が初めてではない。

2019年にペストコントロールが、バンクシー代表作『Love Is In The Air(Flower Thrower)』を商標登録したグリーティングカード会社「Full Colour Black」に対して異議を申し立てた。

この訴訟により、バンクシーの名前と作品を巡る長年の商標権争いが再表面化した。

2021年5月に欧州連合知的財産局(EUIPO)は、バンクシーに対して不利な判決を下した。

EUIPOの判決によると、バンクシーは匿名で身元が特定できない限り、自分の作品に対する権利を主張することはできないという。バンクシーは「商標権のために身元を明かすのではないか」という推測も飛び交うこととなった。

しかし、この判決は覆されることとなる。

新しい判決は、匿名にもかかわらず、バンクシーの有名な作品の1つであるサンドイッチボードをかぶった猿『Laugh Now』の商標権は有効であると結論付けたのだ。

Full Colour Black社の商標が十分に特徴的ではないこと、および「悪意を持って」出願されたことが理由であった。

バンクシーとペストコントロールのチームは、最終的にFull Colour Black社との法廷争いに勝利したのだ。そして、バンクシーの匿名性は依然保たれることとなった。

実は、このグリーティングカード会社「Full Colour Black」は、「Brandalised」のブランドを運営する会社でもあるのだ。

おそらく、この驚異的な勝利が、GUESSに対するバンクシーの声明発表を後押ししたのだろう。

著作権侵害と万引き扇動

https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-63682298

バンクシーは活動初期に元エージェントのスティーブ・ラザリデスの車の後ろで、安価なオリジナルプリントを販売していた。

ただ、商業市場向けに作品や製品を作らず、常にアートの世界の俗物性とそれに伴う富を回避してきた。

バンクシーに尋ねたら、資本主義に迎合したことは一度もないと答えるだろう。大手企業からの数々のオファーを蹴ってきたバンクシーは、これまで作品の悪用にあまり反応してこなかった。

この騒動に関して、バンクシーはBrandalisedやGuessの著作権侵害について追及すべきであった。

著作権侵害は極めて深刻で、侵害行為の差止請求、損害賠償、名誉回復措置など長期にわたるペナルティを引き起こす可能性があるが、通常は民事犯罪である。

しかし、万引きは刑事犯罪である。その是非はともかく、万引きを扇動する行為は間違っていたのではないかと思う。

バンクシーの万引き犯に対する公開呼びかけ投稿には、22,100件におよぶ賛否両論のコメントが寄せられた。

バンクシーのあらゆる破壊行為と同様に、世界の注目を集めたのだった。

バンクシー研究家の鈴木沓子さん

鈴木沓子さんは、2002年ロンドンでバンクシーに直接インタビューした日本のバンクシー研究家です。

日本で発売されるバンクシー商品についてこのように発信されています。

ゲリラ作品『GUESS × Brandalised vs Banksy

RICK FINDLER/STORY PICTURE AGENCY/SHUTTERSTOCK

GUESSが、バンクシー作品を使用したコレクション『GUESS × Brandalised With Grafftti By Banksy』を展示したことを発端とするこの騒動は、ある意味1つのバンクシー作品となった。

店舗のウィンドウ・ディスプレイから「Banksy」の文字が取り除かれていく。

しかし、このコレクションはBrandalisedと協力して生産されたため、GUESSの動きは合法だったようだ。GUESSは「バンクシーに多大な恩義を感じていている」と話している。

  • 合法的に商品を生産した「GUESS」。
  • グラフィティライセンスを体系的に確保したとされている「Brandalised」。
  • 反体制の姿勢で、著作権を放棄した「Banksy」。

バンクシーと企業の論争はこれが初めてではなく、最後でもないだろう。

しかし、疑問は残ります。

誰が正しいのでしょうか?

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