バンクシーが、アンディ・ウォーホルの代表作『キャンベルのスープ缶』にインスパイヤーを受け、2004年に大手スーパーマーケット・テスコのオリジナルブランドのスープ缶を描いた作品『テスコ・バリュー・スープ缶(Tesco Value Soup Can)』。
- アンディ・ウォーホルの『キャンベルのスープ缶』の意味は、アメリカで流行していた抽象表現主義の技術や哲学の批判です。
- バンクシーの『テスコ・バリュー・スープ缶(Tesco Value Soup Can)』の意味は、地元経済を脅かす大企業への批判です。
どちらの作品も、芸術界に大きな不快感を与えました。
こんにちは。バンクシー非公式マガジンBANDAL編集部です。
バンクシー非公式マガジンBANDALでは、バンクシーがなぜ注目されるのか。どうやって有名になったのかなど。バンクシー作品の意味を解説したり、その魅力、メッセージ性の解釈、現存する場所などを発信しています。
この記事では、アンディ・ウォーホルの象徴的な『キャンベルのスープ缶』を模倣したバンクシー作品『テスコ・バリュー・スープ缶』について、意味やメッセージを詳しく解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
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バンクシー版『キャンベルのスープ缶』の意味
バンクシーは、イギリスの大手スーパーマーケット「テスコ」のオリジナルブランドのスープ缶を、アンディ・ウォーホルが1962年に描いた『キャンベルのスープ缶』の21世紀版としてアップデートしました。
誰にでも平等に無限に再現されるイメージを意味する『キャンベルのスープ缶』に反して、バンクシーの『テスコ・バリュー・スープ缶』は、地元経済を脅かす大企業へ痛烈な批判を意味しています。2人の作品の共通点は、大量生産・大量消費への批判を意味しています。
バンクシーは、ウォーホルのスープ缶の形状を引用し、包装のデザインを大きく変えました。バンクシーの故郷イギリスで大衆的なスープ缶といえば『キャンベルのスープ缶』ではなく、『テスコのスープ缶」です。もちろん、どちらもトマト味です。
故郷ブリストルに、大手スーパーマーケット「テスコ」が進出してくるという発表を受け、地元経済を守るため「テスコ反対運動」が起きた際に、暴徒と化し捕まった人の保釈金に充てるため、バンクシーはこの限定版プリントを廉価で販売しています。
『テスコのスープ缶』を美術館MoMAに無断展示
2005年3月25日、バンクシーはニューヨーク近代美術館 (MoMA) に『テスコのスープ缶」を無断展示した後、何事もなかったようにその場を立ち去りました。
警備員の目を盗んで無断展示した『テスコのスープ缶』は、アンディ・ウォーホル作品『キャンベルのスープ缶』の隣に展示されたため、あまりにも他の作品に溶け込んでいました。周囲にいた鑑賞者も警備員もすぐには気づかず、結局、6日間もそのまま展示され続けていました。
バンクシーによる一連の『美術館の無断展示』は、ロンドンの自然史博物館、パリのルーブル美術館、メトロポリタン美術館、ブルックリン美術館、アメリカ自然史博物館やイギリスの大英博物館でも行われ、美術館に展示される作品と鑑賞に来る人、美術館の関係者に「芸術とは何か」を問いかけるメッセージとなりました。
この一連の騒動は、世界中のメディアを駆け巡り、バンクシーの名が知れ渡るきっかけとなった名作となりました。
『テスコのスープ缶』のメッセージ
バンクシーは『テスコのスープ缶』を、アンディ・ウォーホルの『キャンベルのスープ缶』の隣に展示した時、初めて自分を現代アーティストだと思ったと語っています。
美術館に来た鑑賞者は、『テスコのスープ缶』の前で足を止め、深い眼差しで食い入るように鑑賞したのでした。
『キャンベルのスープ缶』を単純化し、安っぽいバージョンにした『テスコのスープ缶』は、芸術と大量生産・大量消費の社会の関係について、考えを巡らせることができます。
芸術は自由です。作品の解釈は、それぞれの人に委ねられます。 |
美術館では、鑑賞者が自分の見る絵を選ぶことはできず、キュレーターの趣味趣向が鑑賞者を支配しています。
バンクシーは、美術館に飾られる現代アーティストではなく、VANDAL(破壊者)でありたいようです。
『テスコのスープ缶』の背後にあるメッセージは、キュレーターの権威を破壊することなのです。
キャンベルのスープ缶の作者アンディ・ウォーホル
アンディ・ウォーホルといえば、ピカソやデュシャンなどと同様に「美術の定義」を変えたアーティストの1人です。
『キャンベルのスープ缶』は代表作の1つで、アメリカのスーパーマーケットに並んでいるキャンベル社のスープ缶を、あえてそのまま描いたものです。
美術とは、特別な美を描くものと定義されてきました。その定義を覆すかのように、大衆的な日用品を描いたウォーホルは、大衆文化の美を描くポップアーティストとして、コマーシャルなアートにも脚光が当たる時代の寵児となりました。
バンクシー版『キャンベルのスープ缶』の概要
カテゴリー | 情報 |
---|---|
作品名 | Tesco Value Soup Can(テスコ・バリュー・スープ缶) |
モチーフ | アンディ・ウォーホルの代表作『キャンベルのスープ缶』 |
解釈 | 大量生産・大量消費への批判 |
コンテクスト | 抽象表現主義の技術や哲学 |
地元経済を脅かす大企業 | |
キュレーターの権威を破壊 | |
作品への反応 | 芸術とは何か |
作品の意味とメッセージについての議論 | |
論争 | 美術館へ無断展示をめぐる法的および倫理的問題 |
芸術作品の価値と重要性をめぐる議論 |
この作品は2005年3月にエディション作品化され、今ではバンクシー作品を象徴する1つになっている。
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