『モンキークイーン(Monkey Queen)』は、故エリザベス女王2世の扇動的な肖像画を引用した、反権威主義の表現です。
『モンキークイーン』の意味は、イギリスは原始的な猿によって運営されているという英国女王のあからさまな批判です。女王の髪に王冠と宝石を身に着け、青白赤のモッズ・ターゲットマークの真ん中に狙われるように描かれた白黒の猿の作品。
女王即位50周年を記念する式典「ゴールデン・ジュビリー」の2002年に描かれたユニオンジャック版の『モンキークイーン』は、英国王室の象徴を「原始的な動物」になぞらえており、「バンクシーゲート」と呼ばれる物議をかもした作品の1つとなります。
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この記事では、エリザベス女王2世を猿で描き物議を醸した作品『モンキークイーン』について、意味やメッセージを詳しく解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
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『モンキークイーン』の意味
『モンキークイーン』の意味は、英国女王のあからさまな批判です。
エリザベス女王を原始的な動物の象徴である猿で描き、イギリスは猿によって運営されていると直接的に表現しています。
王冠・宝石を身に着けた女王の髪をした猿は、ターゲットマークの真ん中に描かれています。
このターゲットマークは、元々イギリス空軍の飛行機に着いていた「Royal Air Force」のマークでした。これを1960年代のロックバンド「The Who」がロゴ等に多様した事により、ロンドンで流行したモダンジャズを愛好する若者集団「モッズ」も愛用するマークとなりました。
ユニオンジャクの『モンキークイーン』
『モンキークイーン』は、いくつかのバージョンが存在します。その1つが、ユニオンジャック・バージョンの『モンキークイーン』です。
イギリスの国旗を背景に、英国の象徴を描いたバージョンは、多くの人にとって否定的な意味合いを持っています。
2002年、女王即位50周年の年に描かれた『モンキークイーン』は、ある物議をかもします。
『モンキークイーン』は、表現の自由か侮辱か
ユニオンジャック版『モンキークイーン』は、ユースクラブ「Chill Out Zone」に飾ってありました。
イギリス南西部ニューネントにある「Chillout Zone」の建物の中に展示してあった『モンキークイーン』は、誰でも見れるショーウィンドウに移動したところ「英国王室と国旗に無礼だ」というクレームが来て大きな問題となります。
メディアにも取り上げられ、全国的な猿の女王論争は「バンクシーゲート(Banksygate)」と呼ばれました。
政府はユースクラブに女王の戴冠50周年記念の期間中は、作品を取下げるように要請します。しかし、この要請は英国における言論の自由と表現の自由の権利を侵害していると問題になります。
結局、ユースクラブは『モンキークイーン』をユニオンジャックのポスターに置き換えました。
『モンキークイーン』のメッセージ
「安くて大衆の手に届くアート」を広めるため、ストリートアートを印刷にして販売する「Pictures on Walls(ピクチャーズ・オン・ウォールズ)」は、2003年にバンクシーを中心に設立されたギャラリーです。
ピクチャーズ・オン・ウォールズ(POW)は、『モンキークイーン』についてこのように掲載していました。
イギリス社会における最高の地位は、努力や才能によって得られたものではなく、単に出生の偶然によって与えられたものという事実をお祝いしましょう。女王陛下万歳。
反王党派の感情が染み込んだバンクシーの『モンキークイーン』。
エリザベス女王は王室に生まれたから、女王になっただけであり、何かを成し遂げたからではないという事実を示唆しています。
世の中は平等ではない。サルが女王になっても、誰でも結局変わらないんじゃないか。
進化の観点からは、私たち人間は彼らより何百万年も「先を行っている」にも関わらず、私たちは彼らとそれほど変わらないし、洗練されているわけでもないと示唆しています。
バンクシーは、世界で最も強力なリーダーの何人かが「その役割に生まれているだけ」というメッセージを伝えています。
猿は皮肉の表現
ネズミと並んで、猿はバンクシーが最も頻繁に描く動物の1つです。
人間の本質を風刺するバンクシーは、批判的な社会評論の中でこれらの動物を教訓的なキャラクターとして取り上げています。
美術史においては、18世紀初頭のフランスの芸術家の間で「サンジュリー」と呼ばれる猿を描いた風刺が人気でした。サンジュリーとは、フランス語で「真似」という意味で、猿が人間の真似をする。つまり、文字通り「猿真似」を描いた美術のことです。
豪華に着飾って人間のふるまいを真似る猿たちを面白おかしく風刺として描くのが一般的で、18世紀のロココ期に頂点を極めました。
「サンジュリー」を現代的に解釈したバンクシーの猿作品も。自分たちを動物界よりも「上」にあると考えることが多い社会を、皮肉たっぷりに風刺しているのです。
バンクシーの猿作品
バンクシーにとって猿は、人類に対する自身の不満を表現する芸術的アイデンティティを象徴しています。
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