『チンパンジーヘッドホン』は、本物のバンクシー作品であると広く信じられてきました。
ただ、Amazonやetsyなど通信販売サイトでしか見られず、バンクシーが公式に発表していないため、海外では本物のバンクシー作品ではないと言われてきました。
調べてみると、音楽を聴いている猿ではなく、交尾動画を見ながら自慰行為をする猿のインスタレーションアート『Primates(霊長類)』をモチーフにした作品であることがわかりました。
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『チンパンジーヘッドホン』の意味は、自慰行為をする霊長類
『チンパンジーヘッドホン』の意味は、自慰行為をする霊長類です。
霊長類の中で進化した人間は、自慰行為をする時だけ猿に退化するというメッセージだと解釈できます。 |
2008年10月、ニューヨークのグリニッジ・ビレッジで開催されたバンクシー公式展示会「The Village Pet Store and Charcoal Grill」で展示された『Primates(霊長類)』。
ペットショップを模した、バンクシーにとってニューヨーク初の展示会で登場した「猿のインスタレーションアート」は交尾動画を見ながら自慰行為をするためにヘッドホンをしていました。
バンクシーの猿『Primates(霊長類)』の意味
飲んだ後のようなビール缶を潰し、大型類人猿ボノボを特集した「ナショナルジオグラフィック」を近くに置いているバンクシーの『Primates(霊長類)』。人間に最も近いといわれるボノボは「セックスと平和を愛する」ユニークな生態で、霊長類進化の謎を解く鍵とみる説も出ています。
猿やチンパンジーをモチーフにしたバンクシー作品は「ダーウィンの進化論」を引用し、人間の退化の象徴として皮肉っています。
また、猿の惑星のように「Laugh Now, but one day We’ll be in Charge (今は笑え。いつか我々が支配するから)」と、猿が人間社会への侵略を計画しているかのようなメッセージとも解釈できます。
『Primates(霊長類)』は、猿に自慰行為を覚えさせると気持ちよくて止まらなくなることや、霊長類の自慰の起源は少なくとも4000万年前に存在したという研究など、霊長類が進化する中で変わらない自慰行為との長い歴史への言及した作品となりました。
『チンパンジーヘッドホン』がバンクシーと言われる理由
『チンパンジーヘッドホン』は、バンクシーがよく描くチンパンジーをモチーフにしていることから、多くの人がバンクシーの作品であると信じていました。
元々は、海外通販サイトで「BANKSY STYLE(バンクシー風)」と紹介され販売されていたところ、「STYLE」と書かなくなってしまったのか、書かない方がよく売れたのか「バンクシー」として広まっていったことが全ての始まりでした。
作品のタイトルも販売会社によって異なり、「Dj Monkey」「Monkey With Headphones」「Thinking Monkey」などのタイトルで販売されています。価格の高騰やその人気からバンクシー作品を買いたいという人は多く、通販サイトでこの作品を目にする機会が増えていき「バンクシー作品」として有名になっていったのです。
日本で広まるバンクシー風作品『チンパンジーヘッドホン』
偽物バンクシーや模倣作品が増えたことで、今では公式インスタグラムと公式サイトで自身の作品であることを発表するようになったバンクシー。
『チンパンジーヘッドホン』は、インスタグラムを開始する前に発売されていたバンクシー公式作品集や、元マネージャーのバンクシー写真集にも掲載されておらず、バンクシー展でも展示はありませんでした。
『Primates(霊長類)』からインスピレーションを受けた「バンクシー風作品」は、海を渡り「バンクシー作品」として日本で広まっていきました。
最も重要なのは、バンクシー風作品だとしても『チンパンジーヘッドホン』は、視覚的に人々を楽しませるアートワークだということです。『チンパンジーヘッドホン』の作者は、猿より知能指数が高いチンパンジーで描くことで、バンクシーを皮肉っているのかもしれません。
※『チンパンジーヘッドホン』は、本物のバンクシー作品である根拠がなく、あくまで第三者による作品ではないかという解釈になります。もしかしたら、本物のバンクシーかもしれませんね。 |
バンクシーの猿/チンパンジー作品
バンクシーは、さまざまな動物を作品のアイコンとして登場させてきました。猿・チンパンジーをモチーフにした作品も数多くあります。
- 退化した議会
- ラフナウ
- Keep it Real
- モンキークイーン
- Danger Monkey Pregnant
- Monkey Banana
- Monkey detonator
- Monkey Mask Session
Devolved Parliament/退化した議会
バンクシー絵画『退化した議会(Devolved Parliament)』は、サルに占拠された退化したイギリス下院を意味しています。
元々『Question Time(答弁時間)』というタイトルで発表された絵画は、『猿の英国議会(Monkey Parliament)』とも呼ばれ、英国が猿によって運営されているというメッセージがあります。
国民が選んだ代表は、いつか選挙で交代する。それまで時間をつぶしていれば、政治家としては生きていける。いつかは責任を取らなくてよくなる時がくる。
そして、EU離脱期限を目前に、てんやわんや大騒ぎする英国議会を予言した絵画と話題になりました。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Devolved Parliament |
作品名 | 退化した議会 |
年代 | 2009年 |
場所 | ブリストル美術館 |
意味 | 猿によって運営される英国議会 |
特徴 | 反体制・反権威主義 |
メッセージ性 | 猿「今は笑え。いつか誰も支配しなくなるから」 |
Laugh now/今は笑え
バンクシーの『Laugh now(今は笑え)』は、バンクシーが人類の性質を風刺するために頻繁に使用する動物の猿をモチーフにした壁画です。
今は笑え。いつか我々が支配するから。
『今は笑え』は、ボード上の不気味な文字は嘲笑的であると同時に脅迫的な意味を持ち、望まれず虐げられた人々が苦しめる者に立ち向かうだろうという革命を警告するメッセージがあります。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Laugh now |
作品名 | 今は笑え |
年代 | 2003年 |
場所 | リビングトン・ストリート、ロンドン |
意味 | 嘲笑的・脅迫的な革命 |
特徴 | 反体制・反権威主義 |
メッセージ性 | 虐げられた人々による蜂起の警告 |
Keep it real/自分らしくあれ
バンクシーの『Keep it real(自分らしくあれ)』は、サンドイッチボードを着たチンパンジーは、服従と支配を意味しています。
『自分らしくあれ』は、資本主義の力の下で意気消沈し抑圧された労働者階級に対する、権威主義的な支配に対する批判のメッセージと解釈できます。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Keep it real |
作品名 | 自分らしくあれ |
年代 | 2002年 |
場所 | ブライトンのナイトクラブ |
意味 | 服従と支配 |
特徴 | 反体制・反権威主義 |
メッセージ性 | 資本主義・権威主義的な支配に対する批判 |
バンクシーの猿『チンパンジーヘッドホン』のまとめ
この記事では、バンクシーの猿作品『チンパンジーヘッドホン』の意味から、バンクシーと言われる理由と経緯を解説してきました。
今や世界中にあふれている無数のバンクシー情報と模倣作品。どの作品がバンクシーの本物なのか、一体何を信じればいいか分からなくなりますよね。
バンクシー作品と思って購入した人もいるかもしれません。ただ、仮に本物でないとしても、ここまで有名になったのは作品自体が魅力的だったからではないでしょうか。
誰が描いたとしても素晴らしいと思われる作品は、芸術の本質だと考えます。
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