バンクシーが、ニューヨークで開催した「Better Out Than In」の9日目。
2013年10月9日に公開したのが「Crazy Horse」という銃照準器ゴーグルをつけた馬の作品です。
Crazy Horseの意味は、米軍ヘリ「アパッチ」
2013年10月9日(水)ローワー・イースト・サイドに登場した最も政治的で革新的な作品は、武器にも見える撮影カメラを持った男たちが、銃照準器ゴーグルを装着して走る「Crazy Hourse」に見つからないように身を隠している様子を描いています。
金網フェンスの中に破棄されていた車とトラックの側面にペイントされた、難易度の高いインスタレーション・アートは、前日までブルーシートに覆われており制作中も発見されませんでした。
近くに置かれた石油バレルには、1-800から始まるフリーダイヤルが書かれていました。電話から流れる空爆音は、この作品が2007年の米軍ヘリによるイラク民間人爆撃事件へのメッセージだということを気づかせてくれます。
バンクシーは特設サイトで、音声ガイドを公開
バンクシーは、ニューヨークでの「Better Out Than In」を開催中、毎日ウェブサイトで作品の発表とともに、写真と街の名前、メッセージ、音声ガイドを掲載しました。
9日目は街の名前「Lower East Side」とともに、音声ガイドを掲載しました。
Crazy Horse
音声では、2007年7月12日にバグダッドの民間人を爆撃する、米軍ヘリに乗る兵士の無線通信をはっきりと聞くことができます。そして、「Crazy Horse 1-8」という米軍ヘリ「アパッチ」のコールサインも聞こえてきます。
この音声は、2010年に元米陸軍情報分析官チェルシー・マニングによって、WikiLeaksにリークされた大量の資料の一部、悪名高い「Collateral Murder」の映像からのものです。
WikiLeaks:ウィキリークスは、匿名により政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイト
Collateral Murder:巻き添え殺人「2007年バグダッド空対地攻撃」
米軍ヘリの銃照準器で撮影された映像には、ロイター通信のジャーナリスト2人を含む、12人のイラク人の無差別殺害が映されていました。
アパッチに乗った米軍兵士はジャーナリストの撮影機材を武器と誤認しているとみられ、攻撃許可を要請します。そして、銃撃で負傷した子供がいると聞いた後には「子供たちを戦闘に連れてきた奴らのせいだ」と言って、笑い声を上げています。
39分間の恐怖映像は、子供が病院に運ばれていることをアパッチの乗組員に知らされたところで終了します。
このサイトには、戦闘員の無線通信のやり取りがテキストで掲載されています。
https://collateralmurder.wikileaks.org/en/transcript.html
ニューヨークで作品が設置された場所
バンクシー・ダズ・ニューヨークの9日目は、Manhattan(マンハッタン区)のLower East Sideに登場しました。
ラッドロー・ストリートの空き地に置かれたインスタレーション・アートは、多くの人に戦争の事実と恐怖を与えました。民主主義に対する本当の脅威は、こうした機密情報が漏洩することにあるという意見があります。民主主義の反対側には、支配や独裁、死と破滅が待ち受けてます。政治家や活動家、メディアからの批判的な声を、迫害や収容、罰金や禁止令を用いて封じ込める例は、ロシアでも起きています。
プーチン大統領は、命令1つで何万人もの人々を戦争に送り出す独裁者です。ウクライナでの戦争は、ロシア全土と政府内において「議論の可能性」を破壊してしまったことが一因と言えるのではないでしょうか。機密情報が漏洩することは、支配や独裁を進める可能性が高いのも事実です。
ただ、戦争の歴史から人類が学ぶべきことがあるのもまた事実です。