バンクシーが、ニューヨークで開催した「Better Out Than In」の12日目。
2013年10月12日に公開したのが、コンクリートの切り欠き窓から見えるイエズス会の司祭を描いた「Concrete Confessional」です。
Concrete Confessionalの意味は、コンクリートの懺悔室
2013年10月12日(土)イースト・ヴィレッジに登場した「Concrete Confessional」。
バンクシーは、ニューヨークでの「Better Out Than In」を開催中、毎日ウェブサイトで作品の発表とともに、写真と街の名前、メッセージ、音声ガイドを掲載しました。
12日目は、街の名前「Manhattan」とともに、このような謎のメッセージが掲載されました。
Concrete Confessional
「Concrete Confessional」の意味は「コンクリートの告解室」です。告解とは、神と司祭の前で信徒が悔い改め、犯した罪を告白することです。
この作品は、ストリートアートならではの環境をうまく利用している好例の1つです。
バンクシーは、コンクリートの告解室にどんなメッセージを込めたのでしょうか。
ベルニ・シェーンフェルドの写真がモチーフ
「Concrete Confessional」のモチーフとなった写真は、1950年代に有名な写真家のベルニ・シェーンフィールドによって撮影された1枚です。2009年にイギリスの日刊紙デイリー・テレグラフの「Picture of the Day(今日の一枚)」に掲載されました。
1955年にオンタリオ州ミッドランドで撮影された写真は、ヒューロン族への宣教師として最初の殉教者「聖アントワーヌ・ダニエル」の聖堂で、告解を聞き頭を抱えているイエズス会の司祭を写しています。
バンクシーはこの写真をモチーフに、セント・ジョージ・ウクライナ・カトリック教会の向かい側、私立大学「クーパー・ユニオン」近くの建設現場にあったコンクリートに司祭を描きました。
コンクリートの中では、頭を抱えてしまうほどの告解が行われていました。
フリー・クーパー・ユニオンへの支援メッセージ
「Cooper Confessional」は、マンハッタン区イースト・ヴィレッジ地区にある私立大学「クーパー・ユニオン」の財政状況を表すメッセージとして登場しました。
クーパー・ユニオンは、創設者ピーター・クーパーの「大学教育は無料であるべき」という信念のもと1859年の創設以来、すべての学生に全額奨学金を支給し、科学技術発展のために歴史的な功績を築いてきました。
しかし、2012年12月、クーパー・ユニオンの高給取りで先見の明のない会長、ジャムシェッド・バルチャ(Jamshed Bharucha)が、2014年から学部生の授業料を徴収し始めると発表し、154年にわたる無償教育の伝統に終止符を打とうとしたのです。
バンクシー作品「Cooper Confessional」には、奨学金モデルから拡張主義的な授業料徴収への変更発表を聞いた、創設者ピーター・クーパーが嘆いている様子を、イエズス会の司祭に重ねて描かれています。
Free・Cooper・Unionについて
クーパー・ユニオンの生徒たちは、ジャムシェッド・バルチャ会長のオフィスを占拠し「フリー・クーパー・ユニオン」を合言葉に声明を発表しました。
これは非暴力による直接的な活動であり、あなたはこの部屋に拘束されることはありません、あなたは好きなときに自由に出て行くことができます。ジャムシェド・バルーチャ、私たちは今日、あなたに学校からの不信任声明を伝えるためにここにいます。私たちはもはやあなたのクーパーでの会長職を正当なものとは認めず、適切な代わりの会長が決まるまで暫定的にこのオフィスを取り戻すことに専念しています。
This is a non-violent direct action, you are not being held in this room, you are free to exit when you please. Jamshed Bharucha, we are here today to deliver you a statement of No Confidence from the School of Art, we no longer recognize your presidency at Cooper as legitimate and in so doing we commit to re-claim this office in the interim until a suitable administrative alternative is secured.
そして、学生たちは保険会社Met Life(メットライフ)を名乗り、偽のプレスリリースを発行しました。
大学が無償のままであることを条件に、2006年の学術棟の建設資金1億7,500万ドルのローンを免除します。
2013年5月14日、当のメットライフは、2006年に行われたクーパー・ユニオンへの1億7,500万ドルの融資を、条件付きで免除すると発表しました。 メットライフのスティーブン・カンダリアン最高経営責任者(CEO)は「何かをしなければならなかった」と、このように語りました。
ジャムシェッド・バルチャ会長のオフィスを占拠した「フリー・クーパー・ユニオン」の学生たちの活動は、条件付きでのローン免除を促しました。メットライフは、成長の機会を増やし促進する資本の変革力を信じています。そして、私たちはその責任を真剣に受け止めています。私たちは、ある意味で、自分たちの投資の管理者であると考えています。したがって、今日の行動が表すモラルハザードを軽視することはありませんが、クーパー・ユニオンが体現するエンパワーメントの遺産を保護する以外に選択肢はないと感じました。
65日間におよぶ学生の活動は、メットライフの決定により報われ、クーパー・ユニオンは154年にわたる実力主義の授業料無料教育の伝統を維持することができました。
バンクシーは、一連の学生運動へのリスペクトを込めて、この場所に作品を残したのです。
ニューヨークで作品が描かれた場所
バンクシー・ダズ・ニューヨークの12日目は、マンハッタンのCooper Square(クーパー スクエア)と、East 7th Street(イースト・セブンス・ストリート)が交差する場所に登場しましたが、24時間も経たないうちに、粗末な白ひげがスプレー塗装されました。
その後、5〜6人の市の建設作業員が、作品のペイントオーバーを防ぐためにプレキシガラスの台を設置しました。
最終的には、全てのコンクリートが撤去されましたが、誰も作品を見るのにお金を取ろうとはしませんでした。