看板に書かれた「Laugh Now, but one day We’ll be in Charge」の意味は「今は笑え。いつか我々が支配するから」です。
サンドイッチ看板を持たされたモンキーは、抑圧されているが、敗北していないことを示唆しています。まるで猿が人間を支配する「猿の惑星」のように、人間社会への侵略を警告するかのような印象を与えられる作品「Laugh Now」。
モンキーは、ネズミと並んでバンクシーが人間の性質を風刺するために最も頻繁に使用する動物シリーズの1つです。たった1人の孤独なモンキーの主張は、力不足に見えます。しかし実はこの作品、元々複数のモンキーと共に描かれました。
バンクシーは「Laugh Now」で、何を伝えたかったのでしょうか。
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「Laugh Now」は、動物虐待と政治への批判
2002年に制作された「Laugh Now」はストリートではなく、ブライトンにあるナイトクラブ「Ocean Rooms」の依頼で制作されました。
全長6mにおよぶバーカウンターの後ろの空間に合わせて、モンキーを10体描いています。
パッと見たモンキーの印象は、肩をすぼめ物悲しげな表情をしているように見えます。ただ、サンドイッチ看板に書かれた挑戦的なメッセージを見ると、不敵な笑みを浮かべているかのように見えてきます。
バンクシーはこの作品で、望まれず虐げられた人々が苦しめる者に立ち向かうだろうという明確な予測を伝えています。
モンキーが10体も並ぶと、デモ行進のように強いメッセージと共に迫ってきているようにも見えてくる「Laugh Now」には主に2つの解釈があります。
- 人間が動物を扱ってきた方法に対する批判
- 政治による支配への批判
動物虐待への批判
1つ目が、人間が動物を扱ってきた方法に対する批判です。
ほとんどの人にとって、サルは雄叫びを上げる原人や、攻撃的な怪物、また狡猾な泥棒を連想させます。
人間は霊長類のいとこであるモンキーを、密猟や娯楽、医療検査のために捕獲してきました。サルを愚かで野蛮な生き物みたいだと笑いものにしたり、みじめな芸を演じさせるために熱心に教え込むのです。
看板の不吉なメッセージは、あたかもバンクシーが差し迫った革命を警告しているかのように、モンキーが蜂起を準備していることを示唆しており、嘲笑と脅迫の両方を含んでいます。
19世紀半ばにチャールズ・ダーウィンが進化論を発表し、ヒトがサルの子孫であると唱えました。それから、人類はその最も近い親類から距離を置こうと繰り返し試みていることへのユーモラスな解釈でもあります。
政治批判
もう1つの解釈が、政治による支配への批判です。
バンクシーは、志を同じくするストリートアーティストとサルを同一視しています。
ストリート・アートは現代社会における芸術の表現として、最もパワフルで効果的な手段です。しかし、それに気づかない支配者たちに嘲り笑われ、粗野で野蛮な芸術の形態と見なされています。
サルが首から提げている看板の重みと、がっくりと落とした両肩、そして疲れ果てたような眼差しは、ストリートアーティストにのしかかる抑圧の大きさを表しています。
この謎めいたモンキーは、支配への反逆を宣言する愛すべきストリートアーティストなのです。
テレビのせいで劇場通いは無駄なものとなったし、絵画は写真にかなり殺されてしまった。だがこういう進歩があったとしても、グラフィティは昔のまま輝き続けている
バンクシー
猿に社会風刺を託したバンクシー作品
バンクシーの最も象徴的で広く普及した動物シリーズの1つであるモンキー作品は、現代生活の社会政治についてシニカルな言葉を発信しています。
人間の愚かさや、危害に関するダークでユーモラスな政治的メッセージを伝えています。
「Keep it real」自分らしくあれ
「警察に嘘をつくことは決して間違っていない」Lying to the police is Never Wrong
ロサンゼルスでの彼の最初の個展「エグジステンシアリズム」ではバンクシーはこのテーマをさらに発展させ、サルたちに別の標語を持たせている。
このシリーズの作品のうち1点は、2008年に500,000ドルで売れた。
『モンキークイーン』意味とは?エリザベス女王を描くバンクシーの猿作品
女王即位50周年を記念する式典「ゴールデン・ジュビリー」の2002年に描かれたユニオンジャック版の『モンキークイーン』は、英国王室の象徴を「原始的な動物」になぞらえており、「バンクシーゲート」と呼ばれる物議をかもした作品の1つとなります。
「Laugh Now」のオークション結果
バンクシーの作品は、本人の意思に反し高値で取引されています。
「Laugh Now Original」
2002年にナイトクラブ「Ocean Rooms」の依頼で制作された「Laugh Now」は、全長6mにおよぶバーカウンターの後ろの空間に合わせて、10体のモンキーが描かれています。
制作から6年後、2008年2月にナイトクラブは壁画を撤去し、Bonhamsオークションハウスで販売しました。手数料込みで £228,000 、約50万米ドルの販売価格で売却されました。
さらに5年後、アンティーク・トレード・ガゼットによると、同じ壁画がフィリップス・ニューヨークで485,000米ドル (250,000ポンド) で販売され、2021年のフィリップス販売展示会で再び出品されました。
暗号通貨で支払われた「Laugh Now パネル A」
2021年6月8日の香港のイブニングセールで、フレーム入りの珍しい「Laugh Now パネル A」が、初めて暗号通貨で売却されました。
アジアのオークションハウスが、芸術作品の支払いとして暗号通貨を受け入れたのはこれが初めてでした。
「Laugh Now パネル A」は、24,450,000 香港ドル (220 万ポンド) で売却されました。
1 か月前、サザビーズ・ニューヨークは、1,290 万米ドルで落札された「Love Is In The Air (花束を投げる男)」の販売で、初めて暗号通貨を受け入れました。
「Laugh Now」
「Laugh Now」は、150 枚のサイン入りプリントと600枚のサインなしプリント、および69 枚のアーティストの校正刷りがあります。
年代 | 2003年 |
画法 | シルクスクリーン版 |
サインあり | 限定150枚 |
サインなし | 限定600枚 |
サイズ | 70x50cm |
販売 |
サイレントマジョリティから、ノイジーマジョリティへ
最後に、10体並んだ猿の作品をもう一度見て欲しい。
10体中、6体には「Laugh Now, but one day We’ll be in Charge」と書かれているが、残りの4体には何も書かれていない。
ここから読み取れるのは、他の主張への余白を持たせたのか。何も主張しない人がいるということなのか。
あなたの主張が聞きたいのかもしれない。
Laugh Now
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— BANKSY🎈バンクシー非公式マガジン (@bandal_jp) October 7, 2023
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