バンクシーは、エレクトロニック・ヒップホップ・トリオ『マッシヴ・アタック(Massive Attack)』のメンバーで3Dと知られるロバート・デル・ナジャ(Robert Del Naja)であると憶測がありますが、バンクシーの正体ではありません。
さまざまな憶測の中で、バンクシーはマッシヴ・アタックのロバート・デル・ナジャが正体ではないかと仮説が立てられるようになりました。なぜこのような仮説が生まれたのでしょうか?
この記事では、バンクシーの正体が『マッシヴ・アタック(Massive Attack)』の3Dと推測された経緯について解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
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ロバートデルナジャがバンクシーではない!
ストリートアーティスト『バンクシー』の正体は、21世紀の大きな謎の1つです。20年以上前にこのストリートアートが有名になって以来、人々は背後にある人物が誰なのか推測し続けてきました。
その中で、おそらく最も有名なのが、マッシヴ・アタック(Massive Attack)のメンバーで3Dと知られるロバート・デル・ナジャです。
バンクシーと3Dの活動の起源を遡っていくと、2人の共通点が見つかりました。
マッシヴアタック3Dとバンクシーは”ブリストル出身”
マッシヴ・アタックのロバート・デル・ナジャで、通称「3D」はブリストル生まれです。
3Dは、元々ブリストルの有名なストリート・アーティストであり、バンクシーに多大な影響を与えた人物だと記録されています。バンクシーは、ロバート・デル・ナジャの著書「3D & the Art of Massive Attack」の序文で、3Dについて次のようにコメントして恩返ししています。
私が10歳くらいのとき、3Dと呼ばれる少年が一生懸命ストリートアートを描いていた。
3Dは絵を描くことをやめ、マッシブ・アタックというバンドを結成した。それは彼にとっては良いことだったかもしれないが、ブリストルの街にとっては大きな損失だった。
ストリート・アーティストとしての活動をやめた3Dは、マッシブ・アタックに加入するまでの数年間、ブリストルを拠点とするバンド『ワイルド・バンチ』と共演していました。
そして、バンクシーもまたブリストル出身として知られています。バンクシーの活動は、1990年代にブリストルの『Dry BreadZ Crew』の一員としてフリーハンドのグラフィティアートから始まりました。
ロバートデルナジャとバンクシーは”ステンシルで作品制作”
マッシブ・アタックを結成する前にストリート・アーティストとしての活動をしていた3Dは、バンクシーと同様にステンシルを使って独自のアートを制作していました。
3Dは、グラフィティ・アーティストとしてキャリアをスタートし、ブリストルにステンシル・グラフィティ運動をもたらした人物であると言われています。先述したようにブリストルで有名なストリートアーティストであり、彼の作品はブリストルの人々に大きな影響を与えました。
3Dの作品は、マッシブ・アタックのレコードジャケットにも登場しています。
そして、3Dは、2度目の逮捕後の1986年にストリートアーティストの活動をやめました。
マッシヴアタック3Dとバンクシーは”作品発表とライブが同時期”
2010年北米に出現したバンクシー作品は、マッシヴ・アタックのフロントマンであるロバート・デル・ナジャによるものであるという噂が飛び交い始めました。
トロント市内に出現したのと同じ日に、マッシブ・アタックがトロントのサウンド・アカデミーでショーを行っていたのです。
この噂は、クレイグ・ウィリアムズという名前の31歳のイギリスのジャーナリズム大学院生の研究に端を発しています。イタリアで広まっている噂を基に、バンクシー作品はマッシヴ・アタックのツアースケジュールに合わせて各都市に出現していることを自身のブログで発表しました。
世界をキャンバスに神出鬼没のバンクシー作品が、マッシブ・アタックの公演が開催される都市に少なくとも6回出現しており、同じパターンはメルボルン、ボストン、ロサンゼルス、ニューオーリンズでも見られました。
2003年にオーストラリアのメルボルンで、そして2010年に北米のいくつかの都市で発見された壁画を指摘した。さらに、バンクシーが2006年にロサンゼルスのディズニーランドでスタントを行った1週間半後の9月に、マッシブ・アタックはロサンゼルスのハリウッド・ボウルでライブを行なっている。
そして、2013年秋のマッシヴ・アタックのニューヨーク公演は、バンクシーがニューヨークで「Better out than in」を開催した1か月の滞在と同時期でした。
芸術集団バンクシーのリーダー、ロバートデルナジャ説
2016年8月28日付けのブログ投稿でクレイグ・ウィリアムズは「3D=バンクシー説」を撤回し、バンクシーは1人の人間ではなく芸術集団であると主張しました。3Dが「バンクシー」を結成した中心メンバーであると主張し「バンクシーチーム説」は、噂を再燃させました。
バンクシーは、ただの1人の人間だという主張は的外れだろう。
むしろ、何年にもわたってマッシヴ・アタックを追って自由に壁にペンキを塗ってきたグループなのだ。そしておそらく、そのようなグループの先頭にはデル・ナジャがいるだろう。近年の英国音楽史において独創的なグループのひとつに所属する多分野のアーティストであり、地球上で最も尊敬されるストリートアーティストとしても活躍しています。
それはクールだろうね。
クレイグ・ウィリアムズは、デル・ナジャの芸名を使ってこのように「シドニー・モーニング・ヘラルド」に語りました。
これまでバンクシーは”3D”だと主張してきたので、この研究結果には悩まされた。
シェイクスピア研究サークルで提案されているアイデアを反映し、膨大な作品は1人ではなく共通のテーマを共有する多くの人の手によって行われたというアイデアをもっと研究したかったのです。
バンクシーは仲間に「ロバート」と呼ばれた
2018年に、DJゴールディがスクロビアス・ピップのポッドキャスト『Distraction Pieces(ディストラクション・ピース)』に出演し、バンクシーを「ロバート」と呼んだことで『3D=バンクシー説』が再燃しました。
グラフィティは、フォントや野球帽をかぶってスニーカーを履いている人に関係するものとして、世界中に広まっていますが、その中心は依然として誤解されています。
バブルレター(グラフィティ)をTシャツに貼って『バンクシー』と書いてもらえば準備は整った。今すぐ売ることができる。
ロバートを軽蔑するつもりはない。(数秒間沈黙…)
彼は芸術の世界をひっくり返した、素晴らしいアーティストだと思う。
DJゴールディは、「世界で最も有名なストリートアーティストの正体が明らかになった」という報道を笑い飛ばし、ラジオ出演後にTwitterで「電話中、3Dが笑い転がり小便をパンツに漏らした」と投稿した。
Just on the phone with #3d rolling around fucking pissing our pants 🤣😂🤣❤
— GOLDIE (@MRGOLDIE) June 23, 2017
ただ、このツイートも否定とは言えず、伝説的なDJが「バンクシーを特定した」という数人の投稿をリツイートしたため、ファンは推測を続けました。
ロバートデルナジャとバンクシーは”お互いに否定”
バンクシーと3Dはお互いに、同一人物であるという噂を否定しているが、関連性があることは否定していません。
3Dは、マーク・トウェインの言葉を借りてデイリー・メール紙に、このように語りました。
私の秘密の正体に関する噂は、非常に誇張されています。
それは良い話でしょうが、残念ながら真実ではありません。希望的観測だと思います。
バンクシーとは仲間であり、(マッシブ・アタックの)ギグに何回か来たことがある。それは純粋に計画と偶然の問題であり、それ以上の何ものでもありません。
3Dはバンクシーを仲間と呼んでいますが、彼自身はアーティストであることをきっぱりと否定しています。
ロバートデルナジャとバンクシーに関連する人物
ジェフ・バロウ
ポーティスヘッドのジェフ・バロウは、マッシヴ・アタックのアルバムがレコーディングされたのと同時期にブリストルのコーチ・ハウス・スタジオでインターンをしていた人物です。
2005年には2人でブリストルで津波救援のためのチャリティー・コンサートを企画しました。
2010年、ジェフ・バロウはバンクシーの映画『Exit through the Gift Shop』のサウンドトラック全体をプロデュースしました。そして、3Dはそのモキュメンタリー映画に出演しました。
このことから、マッシヴ・アタックとバンクシーには、ある種の音楽的なつながりと評価があったに違いありません。
スティーブ・ラザリデス
バンクシーの元広報担当者「ラザリデス・ラスボーン」は、インデペンデント紙に対してこのように語っています。
マッシブ・アタックのライブでバンクシーに会ったが、健全な距離を保っていた。
このエピソードは、ラザリデスがバンクシーと別れた後に語られました。
バンクシーの正体が謎なのは、彼の魅力の1つです。
健全な距離を保っていたのは、正体が3Dであることを示唆するものがたくさんある中、3Dがステージ上にいたからでしょう。
ルイ・セロー
ジャーナリスト兼ドキュメンタリー制作者のルイ・セローは、QPRのフットボールスタジアムで出会った男との出会いをこのように回想しました。
あなたは何をしているのですか?
私はストリートアーティストです
男はこのように言い、小さな作品集を私に渡しました。作品集を見るととても魅力的だったので、少し話をしたあとに、こう言いました。
あなたの名前は何ですか?
バンクシー
この出会いは、バンクシーが有名になる前、ピーター・クラウチが2000年から2001年までQPRでプレーした時期でした。
彼は少し恥ずかしがり屋で、あまり社交的ではなかったが、一緒にQPRの試合を見に行き、クラウチのことで私たちは絆を深めました。
ルイ・セローは、3Dが正体不明のストリート・アーティストだという考えを強く否定しています。
3Dとバンクシーにはつながりがあるように見えるが、当時マッシヴ・アタックはすでに有名で、3Dは35歳だっただろうから、彼は「若手アーティスト」ではなくなるだろう。
2人のつながりの最大の障害は、年齢差のようです。
2023年、3Dは58歳、バンクシーは49歳と言われている。
リチャード・ティルソン
ハル在住のリチャード・ティルソンは、2018年にこの写真を撮影した。
その理由は、自分のビジネスから盗まれるのではないかと心配し、写真を撮ったときはバンクシーのことさえ知らなかった。
しかし、 バンクシー作品が同じ場所に出現した日に、メルセデスのバンに乗って不審な行動をする男性を撮影した写真は、デル・ナジャと驚くほど似ている。
この写真は、彼がバンクシーであるか、アーティストと関係があることを示す最も説得力のある証拠を提供します。
ロバートデルナジャとバンクシーの関係作品
ザ・ウォールド・オフ・ホテル
バンクシーは、ヨルダン川西岸のベツレヘムに、パレスチナとイスラエルの領土を隔てる分離壁を見渡す「世界で最悪の眺め」を誇るスポット『ザ・ウォールド・オフ・ホテル』をオープンしました。
このホテルには、アーティストが厳選した兵舎をテーマにした客室、博物館、マッシブアタック、ナイン・インチ・ネイルズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ハンス・ジマーのオリジナル音楽を演奏した植民地時代をテーマにしたピアノバーが備わっています。
ホテルに宿泊していない人も利用できるピアノバーには自動ピアノがあり、事前に録音されたライブが演奏され、毎晩異なるコンサートが開催されています。
ピアノのオリジナルスコアは、マッシブ・アタックの3D、アティカス・ロス、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー、そして映画作曲家のジマーによって作曲されました。エルトン・ジョンがリモートでオープニングパーティーを演奏する映像がバンクシーのYouTubeに登場した。
このホテルはプロテスト作品であり、マッシヴ・アタックのサウンドトラックをフィーチャーした本当に泊まれるホテルです。
ディズマランド
バンクシーがウェストン・スーパー・メアにオープンしたディストピア・テーマパーク『ディズマランド』では、プッシー・ライオットやマッシブ・アタックのパフォーマンスが計画されていました。
しかし、マッシブ・アタックはバンクシーの偽テーマパーク『ディズマランド』への資金提供も予定されていたが、土壇場でキャンセルした。
まとめ:マッシヴアタック、ロバートデルナジャとバンクシーの”意図的な企み”
『マッシブ・アタック(Massive Attack)』の3Dことロバート・デル・ナジャが、バンクシーと噂された経緯について解説してきました。
3Dがバンクシーではないことは理解できたが、真相は闇の中です。ただ、共通点も多い2人は、間違いなく共同で活動していた時期が存在するだろう。
おそらく、マッシブ・アタックのライブとバンクシーの作品の偶然は、3Dのフレーミング*によってバンクシーの正体を人々から遠ざけようとする意図的な企みだったのかもしれません。
フレーミング:論争や喧嘩に発展する様相をフレーム(flame:炎)と呼び、相手を激高させたり侮辱したりすることを目的に発信するインターネット上の書き込み文書のこと。 |
DJゴールディがバンクシーの名前を「ロバート」と呼んだのも、大衆をもてあそんでストリートアーティストの正体から遠ざける意図的な試みだったのかもしれません。
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バンクシーはイスラエルが「テロ攻撃から自国民を守る」という名目で建設を続ける分離壁や、イスラエル軍の攻撃で疲弊したガザ地区に反戦を訴える作品を残してきた https://t.co/1jtF867IPj pic.twitter.com/3nAlT0vs1V
— BANKSY🎈バンクシー非公式マガジン (@bandal_jp) October 7, 2023
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