Zedsy(ゼドシー)は「イギリスのグラフィティアーティスト」ということ以外、正体が明らかになっていません。
イギリスを中心に活動する匿名アーティストは、バンクシーのアイデンティティーにとてもよく似ており、ストリートを主戦場に人知れずステンシル作品を描く特徴は、時に新たなバンクシー作品が登場したと間違えられることもあります。
公式ウェブサイトとインスタグラムで、作品の答え合わせをする公開時の儀式もバンクシーと類似しています。
Zedsy(ゼドシー)って誰?
Zedsy(ゼドシー)とは、イギリスを中心に活動する匿名アーティスト。生年月日や本名は不明です。
ルーブル美術館やディズマランド、テートモダン、バチカン美術館などでも活動しており、スプレーやアクリル絵の具を使って壁画や絵画、版画、エフェメラなどを制作しています。
この記事ではゼドシーについて、作品解説と経歴、購入方法まで紹介していきます。バンクシーの二番煎じと言われてもおかしくない活動で、世界的に有名になることができるのか。
今だからこそ、バンクシーとの共通点・相違点や作品を通したメッセージにフォーカスして紹介していきます。
Zedsy(ゼドシー)の魅力
Zedsy(ゼドシー)の魅力とは、正体不明の匿名アーティストというアイデンティティーです。
また、ステンシル技法によって、ストリートや壁などの公共物にスプレーで非合法に描き残す作品は、社会政治を風刺するバンクシーを再解釈するアップデートを試みています。
そして、美術館に無許可で作品を展示しており、「俺が次世代のバンクシーだ」というようなパフォーマンスは、ヨーロッパを中心に注目を集めています。
バンクシーとZedsy(ゼドシー)の共通点
バンクシーとゼドシーには、いくつかの共通点があります。
- イギリス出身のグラフィティアーティスト
- 美術館に無許可で作品を展示
- ディズニーやアンディウォーホルをモチーフにしている
- 分離壁に作品を残している
- 反戦・反体制をテーマにしている
- COA(作品証明書)を発行している
バンクシーとZedsy(ゼドシー)の相違点
バンクシーとゼドシーは同一人物ではないと思われる、いくつかの相違点があります。
- 活動開始が2015年9月14日
- インスタグラムでフォローしている人がいる
- ボールペンで描いた作品がある
- 公式サイトで作品を販売している
Zedsy(ゼドシー)が美術史に与える影響
ゼドシーがモチーフにするバンクシーは、グラフィティアートを現代芸術にまで押し上げた功績があります。
また、アートが世界を変えることを体現した作品を数々残しており、人道的支援活動と世界のアートシーンに与えた影響が評価され、芸術大学の名誉教授にも任命されています。
- 美術史において最も力強い反戦絵画芸術の1つ、ピカソの『ゲルニカ』
- 現代アートの世界で最重要作品の1つ、マルセル・デュシャンの『泉』
- 印象派の美的価値観を凝縮した絵画の1つ、モネの『睡蓮』
- 大量消費・生産物をテーマにしたポップアートの1つ、ウォーホルの『キャンベルスープの缶』
これら美術史に大きな影響を与えた作品は、アートの観方、考え方を変えたと言われています。
ゼドシーは、常識から飛び出す発想や自らの信念を信じ取るリスク、答えのない問いで人々や美術にどのような影響を与えることができるのか。これからの活動が楽しみです。
Zedsy(ゼドシー)の代表作
ゼドシーが、ルーブル美術館やディズマランド、テートモダン、分離壁、バチカン美術館に残した代表作品を紹介していきます。
Zedsy(ゼドシー)「Poison Apple」
『Poison Apple』は、バンクシーが2015年に開催した「ディズマランド」に無断展示した作品です。
白雪姫が手にしている現代テクノロジー「アップルのiPhone」は、毒リンゴ(ポイズンアップル)のように、人々に中毒症状または害を与えていることを意味しています。
現代テクノロジーの否定的な側面についての明らかな社会的メッセージ。それとも白雪姫がインスタグラムを閲覧しているだけですか?結局のところ、それほど明らかではありません。
An obvious social commentary on the role of modern technology on early loss of childhood. Or just Snow White playing Candy Crush? Not so obvious after all then.
ディズマランドに無断展示された時のキャプションでは「キャンディークラッシュに夢中」と書かれましたが、公式サイトでは「インスタグラムを閲覧」に書き変わっていました。
バンクシーの美術館に無断展示したパフォーマンスを引用したゼドシーの「Poison Apple」ゴールドエディションは、手仕上げのプリント30版に署名と番号が付けられ、公式サイトにて15ポンドで販売されました。
15ポンドの内、10ポンドはシリアの救援活動に寄付される旨の掲載もあり、結果的に1000ポンド以上が集まり、シリアに拠点を置き直接援助する支援団体「Syria Relief」と「Hand in Hand for Syria」に分けて寄付されました。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Poison Apple |
作品名 | 毒リンゴ |
年代 | 2015年9月14日 |
場所 | ディズマランド |
エディション | 30 |
アーティスト プルーフ | 12 |
媒体 | スプレーペイント |
サイズ | 64 x 45 cm |
Zedsy(ゼドシー)「Reduced Soup Can」
「Reduced Soup Can」は、ロンドンの美術館「テート・モダン」に無断展示した作品です。
キャンベルのトマトスープ缶にテスコの割引シールを貼った作品『Reduced Soup Can(減らされたスープ缶)』は、アンディ・ウォーホルの代表作『キャンベルのスープ缶』とバンクシーの『テスコのスープ缶』を明らかにモチーフにした作品です。
大量生産・大量消費の社会をテーマとして表現したポップアートの価値が下がっていることを意味するかのようなメッセージがあります。
もし芸術が人々を止めさせるなら、あなたは何か正しいことをしているか、ひどく間違っているかのどちらかです
If art makes people stop you’re either doing something right or something terribly wrong.
ゼドシーは、ロンドンのテートモダンに展示された様子をインスタグラムで公開しており、アンディ・ウォーホルの「マリリン・ディプティック」の向かいに展示されていることを報告しています。
アートにどんな価値を置きますか? |
テートモダンに展示された後に、プリント作品を販売することを発表したゼドシーは、『Reduced Soup Can(減らされたスープ缶)』が生産される様子を随時インスタグラムで発表しました。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Reduced Soup Can |
作品名 | 減らされたスープ缶 |
年代 | 2016年4月10日 |
場所 | テートモダン |
エディション | 180 |
アーティスト プルーフ | 10 |
媒体 | スクリーンプリント(6色) |
サイズ | 50 x 36 cm |
Zedsy(ゼドシー)「’Kamikaze Dove’, Vatican Museum.」
『La Colomba Kamikaze(カミカゼの鳩)』は、イタリアの「バチカン美術館」に無断展示した作品です。
ノアの鳩がオリーブの枝を持って箱舟に戻り、新しい世界の希望を象徴しているような『La Colomba Kamikaze(カミカゼの鳩)』は、天国で作られたマッチを咥えており、現代の帰還鳩の姿を表しています。
『La Colomba Kamikaze(カミカゼの鳩)』は、バチカン美術館のラファエルが展示されている隣に展示されました。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | La Colomba Kamikaze |
作品名 | カミカゼの鳩 |
年代 | 2017年4月16日 |
場所 | バチカン美術館 |
Zedsy(ゼドシー)「Bethlehem」
「Poison Reality」「Animals」「Saviour」「Flight」の4作品は、バンクシーが2017年3月ベツレヘムにオープンしたホテル「The Walled Off Hotel」の向かい側の分離壁に展示されました。
ベツレヘム「The Walled Off Hotel」の向かいの壁にあるゼドシー野外ギャラリー。展示期間は、土地の気象条件の慈悲により風でなくなる前まで利用可能です。
Open-air #Zedsy gallery located on the separation wall next to The Walled Off Hotel, Bethlehem. Exhibition duration at the mercy of local weather conditions, so available before it’s gone with the wind.
2018年3月19日に「Poison Reality」「Animals」「Saviour」の3作品を「ベツレヘムプリントセット」として販売することとともに、収益の一部は、パレスチナの慈善団体に寄付することも発表しました。ガザでの水の浄化、オリーブの木の植え付け、西岸の孤児を支援することが含まれていました。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Bethlehem |
作品名 | ベツレヘムプリントセット(3枚) |
年代 | 2018年3月25日 |
場所 | The Walled Off Hotel・zedsy.bigcartel.com |
エディション | 200(COA付き・サイン入り版) |
媒体 | スクリーンプリント |
サイズ | 50 x 50 cm |
Poison Reality(毒の現実)
Poison Reality(毒の現実)のパレスチナの旗は、テルアビブ空港でインスピレーションを得た後、手で色付けされました。
主要メディアの偏見は、イスラエルのパレスチナ人に対する犯罪の製造支援に大きな役割を果たしています。 毒だ。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Poison Reality |
作品名 | 毒の現実 |
年代 | 2018年3月25日 |
場所 | 分離壁 |
Animals(動物たち)
Aminals(触媒)は、動物に直面したときの自然な反応を煽り立てるために使用されるエージェント(代理人)が特徴の作品。
ZC/003 動物に餌をやらないでください
手元には、ムンクの叫びが描かれており、「悪魔は細部に宿る」とメッセージを掲載しています。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Aminals |
作品名 | 触媒 |
年代 | 2018年3月25日 |
場所 | 分離壁 |
Saviour(救世主)
Saviour(救世主)は、2000年前にベツレヘムで生まれたと言われています。
近年も、何人かの人が違法に壁に絵の具を塗り始めたとき、救世主が生まれました。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Saviour |
作品名 | 救世主 |
年代 | 2018年3月25日 |
場所 | 分離壁 |
Flight(フライト)
Flight(フライト)は、鳥のように空高く飛び立つオリーブの木に乗っている少年が、木を倒そうとするブルドーザーに立ち向かっていく様子が特徴の作品です。
オリーブの木は、パレスチナ人の食生活に欠かせないものであると同時に、希望と団結の象徴です。
パレスチナの「Sumud」の概念へのオマージュ – 占領下でも精神は決して負けないという忍耐と決意。
イスラエルによる占領下で、家を破壊され、土地を奪われ、オリーブの木を焼かれても、自分達の魂までは奪われないというパレスチナ人の不屈の精神「Sumud(スムッド)」を意味しています。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Flight |
作品名 | フライト |
年代 | 2018年3月25日 |
場所 | 分離壁 |
Zedsy(ゼドシー)「Needle in a Haystack」
『Needle in a Haystack(見つかりにくいもの)』は、2022年3月22日パリの「ルーブル美術館」に無断展示した作品です。
19世紀印象派を代表するフランス人画家クロード・モネの代表作『積みわら(Haystack)』をオマージュした作品『Needle in a Haystack』は、積みわらの中の針=見つかりにくいものを意味しており、実際に3日半も見つからずにそのまま展示されていました。
ルーブルで都市的なアートを見つけるのは、干草の山の中で針を探すようなものだ。 だから、自分の作品を持っていこうと思った。
モネの『積みわら』は、2019年5月14日サザビーズのオークションに出品され、1億1070万ドル(約121億1500万円)で落札されました。落札されたモネの作品、また印象派の作品としては過去最高額となっています。
絵画 | 説明・解説 |
タイトル | Needle in a Haystack |
作品名 | 見つかりにくいもの |
年代 | 2022年4月10日 |
場所 | ルーブル美術館 |
エディション | 100(サイン&番号入り・COA付き) |
媒体 | アーカイバルプリント&紙にスクリーンプリント仕上げ |
サイズ | 66 x 53 cm |
Zedsy(ゼドシー)の経歴
ゼドシー(Zedsy)の経歴をざっくり紹介します。
2015年9月14日、ディズマランドで無断展示
バンクシーが開催した「Dismaland(ディズマランド)」で無断展示したことから活動が始まります。
2016年2月21日、公式サイトを公開
ゼドシー(Zedsy)の公式サイトを公開します。
2016年4月10日、テート美術館に展示
アンディウォーホルの『キャンベルのスープ缶』を引用し、現代の生活や政治について不遜で風刺的なメッセージをテートモダンに残しています。
2016年11月14日、モロッコで活動
モロッコのアガディールで反戦のメッセージを込めた作品を制作します。
戦争を止めることに興味があるのは、そうする力を持たない人々だけです。
2017年4月3日、永遠の都で活動
『echoes from eternity(永遠の都から響き渡る)』という活動をローマで開始。
ありきたりな写真は禁止?私が今まで聞いた中で最も馬鹿げたことだ。- アメリカ人観光客。 場所:ローマ、コロッセオ
永遠の都ローマに、もう少し独創的になろうというメッセージを添えた。
2017年4月15日、バチカン美術館で活動
2017年11月25日、ベツレヘムで活動
ベツレヘムの分離壁に、複数の作品を残します。
パレスチナのオリーブの木が破壊され、有刺鉄線の周辺に置き換えられても、平和への希望は残ります。
2018年10月15日、トルコで活動
泣く経済 – トルコのイスタンブール。
トランプ大統領による財政制裁により、トルコ国家は国際的な騒動で続く経済危機の真っ只中。
2020年9月13日、ディズマランド5周年記念を祝う
恐ろしいことから5年目。 おそらく近いうちに来る。
かなり皮肉なことに、版は5分以内に売り切れました。
2022年3月19日、フランスで活動
象徴的な都市を訪れた際、グラフィティアーティストが有名な場所を巡り、印象的なマークを残しています。
ルーブルに何が無い?
Zedsy(ゼドシー)の購入方法
ゼドシー(Zedsy)の作品は、公式オンラインショップから購入することができます。
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