バンクシーが、ニューヨークで開催した「Better Out Than In」の4日目。
2013年10月4日に公開したのが、ブロードウェイを変革させる3つの作品です。
3つのThe Musical
2013年10月4日(金)ブルックリンに登場した「PLAYGROUND MOB」と「Dirty Underwear」と「OCCUPY! 」の3つのミュージカル(The Musical)。
バンクシーはニューヨークでの「Better Out Than In」を開催中、毎日ウェブサイトに作品の写真と街の名前、メッセージ、音声ガイドを掲載しました。
4日目は、街の名前「Delancey, Bushwick, Williamsburg」とともに、このような謎のメッセージがありました。
Random graffiti given a Broadway makeover (an ongoing series).
直訳すると「ブロードウェイを変革させる無作為の落書き(進行中のシリーズ)」になります。
ブロードウェイ近くの3地区(ディランシー・ブッシュウィック・ウィリアムズバーグ)にあった知らない人の落書きに、バンクシーは変革をもたらしました。
PLAYGROUND MOBの意味は、暴徒
1つ目は「PLAYGROUND MOB(暴徒)」の落書きに、ザ・ミュージカルを追加して変革させた作品です。
控えめな灰色の壁の「暴徒」は一晩で、怒号を大合唱するミュージカルに変わりました。
「PLAYGROUND MOB」は、Lower East SideのDelancey(ディランシー)に描かれました。
今では、壁もゴミ箱も別の色のペンキが塗られています。
Dirty Underwearの意味は、汚い下着
2つ目は「Dirty Underwear(汚れた下着)」に、ザ・ミュージカルを追加して変革させた作品です。
汚れた下着を夢の中で見るのは、自分の現状に満足していないからだと言われています。人生を変えるには、まず古い習慣や考え方を変えましょうという教えでもあります。
汚れた下着は一晩で、古い習慣や考え方を壊すミュージカルに変わりました。
「Dirty Underwear」は、Lower East SideのBushwick(ブッシュウィック)に描かれました。
今では作品は消され、他のタギングが微かに見えています。
OCCUPY!の意味は、ミュージカルを占拠せよ!
3つ目は「OCCUPY! (占領せよ!)」の落書きに、ザ・ミュージカルを追加して変革させた作品「ミュージカルを占拠せよ!」です。
ここで、バンクシーが描いた3つの作品は「ウォール街を占拠せよ!」をモチーフにしていることがわかります。
ウォール街を占拠せよ!がモチーフ
「ウォール街を占拠せよ!(Occupy Wall Street)」とは、2011年9月17日から米ニューヨーク市マンハッタン区のウォール街で始まった、アメリカ経済界・政界に対する抗議デモの合言葉です。
2008年9月15日、投資銀行リーマン・ブラザーズが連邦倒産法第11章の適用を申請し、リーマン・ショックが発生して以来、世界中が金融危機の不景気に喘いできました。利潤のみを求める行き過ぎた金融資本主義が広がった結果、若者の4割は職業がなく、それに対し有効な対策を打てないアメリカ合衆国連邦政府に対する不満が、この抗議デモの呼びかけに賛同させたと言われています。
「1%の金持ち、99%は貧乏」「富裕層に課税を!貧乏人に食べ物を!」と、参加する若者たちは、ピザの箱の裏や段ボールにメッセージを書き、貧困と格差が広がりきった社会システムに怒りをぶつけました。
この抗議デモでは、ソーシャルメディアが多用されたことが知られています。SNSにより運動が拡散され、キャンペーンを展開して不満を訴え、メディアに接触し、政府関係者とやり取りをするという動きは、アメリカのみならず世界の主要都市に広がっていきました。
ただ、政府の対応は、抗議デモの要求に歩みを寄せる言葉を述べる程度にとどまり、大きな政策転換をすることはありませんでした。いずれの都市でも大規模なデモが実施されたにもかかわらず、その実りは乏しく実現されていません。
ウォール街を占拠する抗議デモと、ニューヨークを占拠するストリートアート。
どちらもソーシャルメディアを多用した活動ですが、バンクシーがウェブサイトに掲載した通り「進行中のシリーズ」と、抗議デモはまだ完結していない続きものであり、形を変えて運動を継続していることを示しています。
3つの作品を通して、変革を求め街を占拠する若者達のミュージカルを上演しました。
「OCCUPY! 」は、Lower East SideのWilliamsburg(ウィリアムズバーグ)に描かれました。
今では建物自体が取り壊され、新たな建物になっています。
59日間におよぶウォール街の占拠は、ニューヨーク市警による強制排除で幕を閉じました。
建物の壁に描かれるストリート・アートも、いつかは建物ごと取り壊され強制的に排除される運命なのです。