バンクシーが、2013年10月29日(火)にニューヨークのマンハッタンにあるリサイクルショップで公開した作品が「The Banality of the Banality of Evil.(凡庸な悪)」です。
ニューヨークで開催した「Better Out Than In」の29日目は、グラマシー・パークにある非営利団体「Housing Works」が運営するスリフトショップで購入した50ドルの古い絵画に、バンクシーが手を加え返却されました。美しい風景の前のベンチに、ナチス親衛隊が描き加えられています。
バンクシー「The Banality of Evil(凡庸な悪)」ナチス親衛隊の意味
「The Banality of Evil」とは、悪は悪人が作り出すのではなく、思考停止の凡人が作るという意味です。
「凡庸な悪」とも訳されるこの言葉は、政治哲学者ハンナ・アーレントがナチス政権による「ユダヤ人問題の最終的解決(ホロコースト)」の親衛隊中佐アドルフ・アイヒマンの裁判の記録を元に『エルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告』で著しました。
数百万のユダヤ人を強制収容所へ移送するにあたって指揮的役割を担ったアドルフ・アイヒマンは、「自分の所属する組織の命令に従ったまで」であり「自分の意志ではない」と抗弁し無罪を主張し続けました。
第二次大戦中に起きたナチスによるユダヤ人迫害のような「悪」は、思考停止し外的規範に盲従した人々によって行われた陳腐なものという考え方です。「凡庸な悪」は、表層的な悪であるからこそ、社会に蔓延し世界を壊滅させうるもの。つまり、どこにでもある「凡庸なこと」なのだという概念です。
このバンクシー作品のメッセージは、歴史上の巨悪の多くは、自分たちの行動を「普通」と受け入れてきた「普通」の人々によって行われてきたと解釈することができます。
バンクシーがハウジング・ワークスへ寄付した作品
ハウジング・ワークスは、低所得者やエイズの人たちの支援活動をしている非営利団体です。バンクシーの作品は、そのハウジング・ワークスが運営するスリフトショップのウィンドウに展示されました。
スリフトショップ(Thrift Shop)とは、寄付で集めた衣類や小物、または、家具や家電、食器などを売るお店です。お店の売上を、ホームレスや低所得者への住居や医療・食料の補助、職業斡旋などに使用しています。アメリカ国内のHIV保持者は120万人、うち10万人がニューヨークにいると言われています。HIVは、保持者というだけで職に就けず、ホームレスとなる人も多いのが現状です。
バンクシー「凡庸な悪」ナチス親衛隊の最期
バンクシーの公式サイトによると、「スリフトショップの絵画は破壊され、スリフトショップに再寄付された」といいます。
マネージャーのロブさんは、「この絵は2か月前に約50ドルで売られていました。ただ、また現れたのです。今朝からずっとそこにあったのに、誰も気づかなかったのです。」と語りました。他のスタッフによるとその絵は「匿名の寄付者」から贈られたものだと言い、ウィンドウに飾るようにという提案も受けたようです。
ウィンドウに展示された商品は、オークションにかけられることもあり、誰でも入札することができます。さらに通常、支援内容や金額などは、アニュアルレポートやフィナンシャルレポートに掲載されます。
バンクシー作品もオークションに出品されました。最低価格7万6000ドルで始まった競売は、61万5000ドルで落札されたという話もありますが、正確に何が起こったのかについて多くの論争があります。
ニューヨークの場所はどこ?ハウジングワークス・スリフトショップ・グラマシー
バンクシー・ダズ・ニューヨークの29日目は、マンハッタン区のグラマシー・パークにあるハウジング・ワークスのスリフトショップに登場しました。
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