バンクシーが、ニューヨークで開催した「Better Out Than In」の5日目。
2013年10月5日に公開したのが、移動式の庭園に改造された配送トラックです。
Mobile Gardenの意味は、移動式の庭園
2013年10月5日(土)セント・マークス・プレイスに登場した「Mobile Waterfall on Inside of Truck Touring Daily」。
1992 GMCの配達トラックはボロボロで、グラフィティがいたるところに落書きされています。イーストビレッジを出発してからは、毎晩夕方から別の場所をツーリングしますと発表されたインスタレーション・アート。
そんなタグ付けされた古いGMCの中には、小さな楽園の世界がありました。
本物の水が飛び散る滝に、明るい太陽と青い空が広がる森。そこには虹がかかっています。そして、小さな橋には蝶が羽ばたく移動式の庭園は、ニューヨークの街を巡回しました。
3次元の移動式オアシスは、ニューヨークに安らぎを与えれたのでしょうか。
Mobile Gardenと共に音声ガイドを公開
バンクシーはニューヨークでの「Better Out Than In」を開催中、毎日ウェブサイトに写真と街の名前、メッセージ、音声ガイドを掲載しました。
5日目は「All City」とともに、このような謎のメッセージがありました。
A New York delivery truck converted into a mobile garden (includes rainbow, waterfall and butterflies).
直訳すると「ニューヨークの配送トラックが移動式の庭園に変身(虹と滝があり、蝶もいる)」になります。
音声ガイドでは「1992年のGMCの”ディーゼル駆動の景観”には”安らぎ”をもたらす流れる滝がある」と言います。さらに続けて「このような対比は、アーティストにとって共通のテーマです。別の言い方をすれば、ただ”繰り返し続けているだけ”です」と述べています。
ディーゼル駆動と、流れる滝、そしてアーティストの芸術活動の繰り返しの対比を描いた作品。
まさに移動式のオアシスですが、このトラックが運んでいたのは”安らぎどころか混乱”でした。トラックが移動すると大勢の人がついていき、人混みの中でもスマートフォンで写真を撮ろうと皆が必死でした。
この作品を見にいった犬の散歩代行業者であり、バンクシーの追っかけでもある男は、その様子をYouTubeにアップロードしています。
落ち着いて庭園を眺められる訳でもなく、写真を撮るのに夢中の群衆の中に立ち止まって安らいでいる人は一人もいませんでした。
安らぎは持ち運べないというように、手に持っているスマートフォンに混乱させられている現代人を皮肉ったような「Mobile Garden(モバイル・ガーデン)」。
汚れた古いトラックとグラフィティを重ね合わせ、内側は綺麗で安らぎを与えるという対比も表現していますが、作られた安ぎは本質的ではないという皮肉的なメッセージとも解釈できます。
ニューヨークで作品が巡回した場所
バンクシーが公開した5日目の写真は「モット・ストリート127番地」で撮影されました。
The truck will visit a different location every evening from dusk. Tonight – East Village
毎晩、夕暮れから別の場所をツーリングした配送トラックは、予測が難しいさまざまな場所に停車しました。
初日に訪れたのは、日本食レストランも多く、ニューヨークの「リトル・トーキョー」として紹介されることもあるEast Villageのセント・マークス・プレイスでした。他に、イーストビレッジ・ミートマーケット、アスター・プレイスなど、振り返ってみると貨物エリアの都市ばかりでした。
10月31日までニューヨークを巡回する予定だった配送トラックは、機械的な故障で動かなくなってしまいました。
果たして今日の配送トラックは、安らぎを運べているのだろうか。